役員貸付金が増えると何が困る?認定利息の税務と減らし方
この記事の要点
- 役員貸付金は「会社が社長にお金を貸している」状態です。報酬を低く抑えて、会社のお金を個人で使うと積み上がります。
- 無利息で貸していると、通常の利息との差額が役員給与とみなされることがあります。利率の考え方は国税庁が示しています。
- 減らし方は、返済、報酬の見直し、賞与、相殺などがあります。どれも税務の手順を守ることが前提です。
決算書の貸借対照表に「役員貸付金」や「短期貸付金(代表者)」という科目が毎年増えていませんか。
少額で一時的なものなら珍しくありません。ただ、毎年積み上がっていくと、税務と決算書の両方で気にしておきたいことが出てきます。
役員貸付金はなぜ増えるのか
役員貸付金は、会社から社長(役員)にお金が出ていき、まだ返っていない金額です。よくある原因は次のとおりです。
- 役員報酬を低く抑え、足りない生活費を会社の口座から出している
- 個人の支払い(住宅、車、家族の費用など)を会社のお金で立て替えた
- 使い道が分からない出金を、決算のときに貸付金として処理した
報酬を上げると所得税・住民税や社会保険料が増えるため、「必要なときに会社から出せばよい」と考えがちです。しかし貸付金は、社長が会社に返すべき借金です。返すお金は、税金や社会保険料を払ったあとの個人の手取りから出すことになります。
役員報酬の決め方は役員報酬の記事で解説しています。
税務:無利息だと役員給与とみなされうる
会社が役員にお金を貸すとき、利息をもらわない、または低い利息にしていると、通常の利息との差額は「経済的な利益」として扱われます。
| 立場 | 扱いの考え方 |
|---|---|
| 会社(法人税) | 無償や低い利率で貸した場合の利息の差額は、役員に給与を支給したのと同じ経済的効果があるもの(法人税基本通達9-2-9(7)) |
| 社長個人(所得税) | 利息の差額が給与として課税されることがある(所得税法36条、所得税基本通達36-28・36-49) |
「通常の利息」をいくらと見るかは、所得税基本通達36-49に書かれています。
- 会社が銀行などから借りたお金をそのまま貸したことが明らかな場合:その借入金の利率
- それ以外の場合:貸し付けた日の年の「利子税特例基準割合」による利率
| 貸し付けた年 | 利率(国税庁) |
|---|---|
| 令和4年〜令和7年 | 年0.9% |
| 令和8年(2026年) | 年1.3% |
計算例として、令和8年に1,000万円を無利息で貸した場合、この利率で計算した利息は年13万円です。この部分が給与とみなされうる、ということです。
一方、次のいずれかに当たる場合は、給与として課税しないとされています(所得税基本通達36-28)。
- 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要になった役員・使用人に、合理的な金額と返済期間で貸した場合
- 会社の借入金の平均調達金利など、合理的な利率を定めて利息を受け取っている場合
- 上記以外で、利息の差額がその年に5,000円以下の場合
利息を受け取る形にするなら、金銭消費貸借契約書を作り、利率と返済期日を決めて、実際にそのとおり返すことが大切です。
利率は年によって変わります。出典:国税庁 No.2606 金銭を貸し付けたとき、所得税基本通達36-49、所得税基本通達36-28、法人税基本通達9-2-9
決算書での見え方
役員貸付金は、貸借対照表の資産の部に載ります。さらに法人税の申告書に付ける「勘定科目内訳明細書」には「貸付金及び受取利息の内訳書」があり、相手先や期末の残高、利息を書きます。
つまり、決算書を受け取った人は「誰にいくら貸しているか」を読み取れます。
銀行の評価のしかたは公表されておらず、金融機関や会社の状況によって違います。そのうえで一般には、次のような点が気にされやすいと言われます。
- 資産に載っていても、実際に回収できるかどうか分かりにくい
- 借りたお金が社長個人に流れていないか
- 毎年増えているか、返済が進んでいるか
銀行に決算書がどう読まれるかは、銀行と決算書の記事でまとめています。
出典:国税庁 e-Tax 勘定科目内訳明細書の標準フォーム等
役員貸付金の残高と報酬の額から、無理のない減らし方を一緒に考えます。初回相談は無料です。
減らし方の選択肢
減らすには「社長が返す」か「会社から社長に払うお金と相殺する」かのどちらかです。主な方法を比べます。
| 方法 | 中身 | 税務上の注意 |
|---|---|---|
| 個人の資金で返済 | 預金などから会社に返す | 返済そのものに課税関係は生じにくい。返済の記録を残す |
| 役員報酬を見直して返済 | 報酬を上げ、増えた手取りから毎月返す | 損金にするには定期同額給与の要件を守る。改定は原則、事業年度開始から3か月以内。報酬が増えると所得税・住民税と社会保険料も増える |
| 役員賞与で返済 | 賞与を払い、その手取りで返す | 損金にするには事前確定届出給与として届出が必要。届出期限は原則、株主総会等の決議から1か月か事業年度開始から4か月の早いほう |
| 会社が払うお金と相殺 | 役員退職金など、会社が社長に払うお金と差し引く | 相殺しても支給額全体が給与や退職金として課税される。退職の事実と金額の妥当性が前提 |
| 個人の資産を会社に売る | 社長個人の資産を会社が買い、代金と相殺 | 時価より高く買うと、差額は役員への経済的利益とされる(法人税基本通達9-2-9(3))。個人側で譲渡の課税が生じることもある |
| 会社が債権を放棄 | 貸したお金を返してもらわない | 放棄した額は役員への経済的利益とされる(同9-2-9(4))。役員給与となり、損金にならない場合がある |
報酬の額が不相当に高額な部分は、どの方法でも損金になりません。出典:国税庁 No.5211 役員に対する給与、法人税基本通達9-2-9
実務では、まず「これ以上増やさない」ことが先です。生活に必要な額を役員報酬として受け取り、会社の口座から個人の支払いをしない形に整えます。そのうえで、残高を何年で返すかを決めます。
引退が近い場合は、役員退職金と相殺する方法もよく話題になります。退職金の相場や決め方は役員退職金の相場の記事、手取りの目安は退職金の手取り計算ツールで確認できます。
どの方法が合うかは、会社の利益、資金繰り、社長の年齢や家族の状況で変わります。実行の前に顧問税理士とご確認ください。
よくある質問
役員貸付金に利息をつけないと、必ず課税されますか?
必ずではありません。利息の差額がその年に5,000円以下の場合や、会社の平均調達金利など合理的な利率で利息を受け取っている場合などは、給与として課税しないとされています(所得税基本通達36-28)。
利息をつけるなら、利率はいくらにすればよいですか?
会社が借りたお金をそのまま貸したことが明らかなら、その借入金の利率です。それ以外は、貸した年の利子税特例基準割合による利率で評価します。国税庁の表では令和8年は年1.3%です。
役員退職金で相殺すれば、貸付金はなくなりますか?
退職金の額が貸付金より大きければ、差し引いて残高をなくせます。ただし退職金は支給額全体が課税の対象になり、退職の事実や金額の妥当性も問われます。退職のずっと先まで貸付金を放っておく理由にはなりません。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。税務の取扱いは個別の事情で変わるため、実行の前に税理士にご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
