銀行は決算書のどこを見る?ギリギリ黒字・役員報酬・役員貸付金・赤字の説明
この記事の要点
- 銀行は損益計算書の利益だけでなく、貸借対照表や勘定科目内訳明細書まで見ることがあります。
- ギリギリの黒字、低すぎる役員報酬、増え続ける役員貸付金は、説明を求められやすい項目です。
- 評価の仕方は金融機関ごとに違います。赤字の年こそ、理由と見通しを文書で伝えるのが基本です。
「黒字だから大丈夫」と思っていたのに、融資の相談で思ったような返事がもらえなかった。そんな声を聞くことがあります。
銀行は、決算書の「利益の額」だけを見ているわけではありません。この記事では、銀行が気にしやすい4つのポイントと、社長がご自身で点検できる表をまとめます。
前提:銀行の見方は金融機関ごとに違う
以前は、金融庁の「金融検査マニュアル」が、銀行が融資先を評価するときの共通の物差しのように使われていました。
このマニュアルは2019年12月に廃止されました。金融庁は同じ時期に「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」を公表しています。
- 金融機関は、自らの経営理念や融資方針に沿って、融資先のリスクを見る
- 過去の数字だけでなく、将来の見通しや数字以外の情報も評価に生かす
つまり、「この数字なら必ずこう評価される」という共通の基準はありません。この記事の内容も、銀行が気にしやすい傾向として読んでください。
出典:金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」の公表、金融庁「検査マニュアル廃止後の引当に関する取組み」
銀行が見ている書類
融資の相談では、決算書一式の提出を求められるのが一般的です。損益計算書と貸借対照表に加えて、法人税申告書に添付する「勘定科目内訳明細書」も見られることがあります。
| 書類 | 分かること |
|---|---|
| 損益計算書 | 売上、利益、役員報酬を含む経費 |
| 貸借対照表 | 現預金、借入金、役員貸付金などの残高 |
| 仮払金(前渡金)・貸付金及び受取利息の内訳書 | 誰にいくら貸しているか、利息を受け取っているか |
| 役員報酬手当等及び人件費の内訳書 | 役員ごとの報酬の額 |
| 借入金及び支払利子の内訳書 | どこからいくら借りているか |
勘定科目内訳明細書は全部で16種類の様式があります。出典:国税庁 e-Tax「勘定科目内訳明細書の標準フォーム等(令和6年3月1日以後終了事業年度分)」
気にされやすい4つのポイント
1. ギリギリの黒字
売上に対して利益がごくわずかな決算は、「赤字を避けるために数字を調整したのでは」と受け取られることがあります。黒字であることより、利益が安定して出せる体質かどうかを見られやすいためです。
2. 低すぎる役員報酬
会社の業績に比べて社長の報酬が極端に低いと、「利益を出すために報酬を抑えているのでは」「社長の生活費はどこから出ているのか」と思われることがあります。報酬の額そのものより、会社の状態に見合っているかが問われます。報酬の決め方は役員報酬の決め方の記事で解説しています。
3. 増え続ける役員貸付金
会社のお金を社長が個人で使い、精算しないままにすると、貸借対照表に「役員貸付金」として残ります。銀行からは「会社のお金が社長個人に流れ、戻ってくるか分からない資産」と見られやすい項目です。融資したお金が個人に流れる心配にもつながります。
報酬を低く抑えて、足りない生活費を会社から借りる形が続くと、2と3が同時に起きます。
4. 社長個人と会社の関係
中小企業では、会社と社長個人のお金を一体で見る考え方があります。国の「経営者保証に関するガイドライン」でも、保証に頼らない融資を受けるための要件の1つに、法人と経営者の資産やお金のやりとりがはっきり分かれていることが挙げられています。
| 経営者保証なしの融資を検討する要件 |
|---|
| 法人と経営者の資産・お金のやりとりが明確に区分・分離されている |
| 財務基盤が強く、法人の資産や収益力で返済できる |
| 金融機関に、財務情報を適時適切に開示している |
ガイドラインは全国銀行協会と日本商工会議所が中心となって策定し、2014年2月から適用されています。要件を満たせば必ず保証が外れるものではありません。出典:中小企業庁「経営者保証」
決算書を一緒に見ながら、役員報酬と社長個人のお金の流れを整理します。
銀行目線の点検表
手元の決算書を開いて、次の表に沿って見てみてください。「要確認」に当たっても、すぐに問題になるとは限りません。説明できるように準備しておくための表です。
| 見る場所 | 確認すること | 要確認のサイン |
|---|---|---|
| 損益計算書の利益 | ここ数期、利益は安定しているか | 毎期、利益がごくわずかで横ばい |
| 役員報酬 | 会社の業績と見合っているか | 好業績なのに報酬が生活できない水準 |
| 役員貸付金 | 残高と増減、返済の予定 | 毎期増えていて、返済の計画がない |
| 仮払金 | 中身と精算の予定 | 何年も同じ額が残っている |
| 現預金と借入金 | 手元資金と借入のバランス | 借入が増え、現預金が減り続けている |
| 前期との比較 | 大きく動いた科目の理由 | 理由を社長自身が説明できない |
赤字の年の説明のしかた
赤字になった年に大切なのは、数字を取り繕うことより、理由を説明することです。取引先の倒産、設備投資、災害などで一時的に赤字になった場合、その理由と回復の見通しが示せれば、評価の材料になります。どう受け止めるかは金融機関や状況によります。
理由を書く
何が原因で赤字になったかを具体的に書きます。
一時的な根拠
なぜ来期は同じことが起きにくいのかを示します。
来期の見通し
売上と利益、資金繰りの見込みを数字で出します。
文書で渡す
口頭だけだと、担当者が代わったときに伝わりません。
本格的な立て直しが必要な場合は、国の「経営改善計画策定支援事業」(通称405事業)を使う方法もあります。認定経営革新等支援機関(税理士など)の支援を受けて計画を作り、費用の3分の2を国が負担します(通常枠の計画策定支援は上限200万円)。窓口は各都道府県の中小企業活性化協議会です。
金融支援を伴う経営改善が必要な中小企業が対象で、金融機関との調整が前提になります。出典:中小企業庁「経営改善計画策定支援」
誰に相談すればよいか迷うときは、お金の相談先の比較記事も参考にしてください。
決算前にできるチェックリスト
- 役員報酬は、会社の業績と社長の生活費の両方から見て妥当か
- 会社のお金を個人の支払いに使っていないか。使った分は精算したか
- 役員貸付金がある場合、返済の計画を立てているか
- 仮払金など、中身が説明できない科目が残っていないか
- 利益を無理に調整していないか。調整した場合、その理由を説明できるか
- 前期から大きく動いた科目の理由を、社長自身が説明できるか
- 赤字やその見込みがある場合、理由と見通しを文書にしたか
- 決算の内容を、顧問税理士と事前に話し合ったか
役員貸付金の利息や返済方法、報酬の改定時期には税務上のルールがあります。実際に動かす前に、顧問税理士と確認してください。印刷して使えるチェックシートは無料PDFチェックシートからどうぞ。
よくある質問
黒字にさえしておけば、融資は通りますか?
黒字かどうかだけで決まるものではありません。利益の安定性、役員貸付金などの資産の中身、今後の見通しなどをあわせて見る金融機関が多く、評価の仕方は金融機関ごとに違います。
役員報酬を上げると、利益が減って銀行の評価が下がりませんか?
報酬の額より、会社の状態に見合っているかが見られやすいと考えられます。手元資金や利益の推移とあわせて判断されるため、改定の前に資金繰りへの影響を確認し、顧問税理士と相談してください。
役員貸付金はどうやって減らせばよいですか?
社長個人からの返済、報酬の見直しによる計画的な返済などの方法があります。利息や税務上の扱いが関係するため、方法を決める前に顧問税理士と確認するのが安全です。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。融資の判断や決算書の評価の仕方は金融機関ごとに異なります。税務の取扱いは顧問税理士にご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
