法人NISAとは?会社の利益を保険で積み立て、社長の退職金として税負担を抑えて受け取る方法
「法人NISA」は当社が使っている呼び名です。国の制度であるNISA(少額投資非課税制度)は個人しか使えず、会社名義では利用できません。この記事では、会社のお金で社長の退職金を効率よく準備する方法を、分かりやすくこう呼んでいます。
この記事の要点
- 会社が契約者、社長が被保険者の法人保険に利益の一部を積み立て、退任時に解約返戻金を財源に役員退職金を支払う考え方です。
- 役員退職金は退職所得として給与とは別に計算され、控除後の金額の2分の1に税金がかかります。在任25年・退職金5,000万円の例では、税金は約14%です。
- 2019年の通達改正で、解約返戻率が高い保険は経費にできる割合が制限されました。退任予定時期に解約返戻率が高くなる商品を選ぶことが大切です。
毎年利益が出ているのに、法人税を払うと手元にあまり残らない。そのうえ社長ご自身の退職金は何も準備していない。40〜50代の社長から、よく伺うお悩みです。法人NISAは、この2つを同時に解決するための考え方です。
法人NISAの仕組み
- 1会社の利益一部を保険料に
- 2法人保険で積立一部は経費に
- 3退任時に解約返戻金が財源
- 4役員退職金税負担が軽い
流れは3段階です。
- 積み立てる:会社が契約者、社長が被保険者になる法人保険に加入し、利益の一部を保険料として払います。保険料の一部は会社の経費になるため、その年の法人税が減ります。
- ためておく:保険の中で解約返戻金が積み上がっていきます。社長に万一のことがあれば、死亡保険金が会社に入り、ご家族への弔慰金や借入金の返済に充てられます。
- 受け取る:社長の退任時に保険を解約し、その解約返戻金を財源に役員退職金を支払います。会社側では退職金が経費になるため、解約返戻金の益金と相殺できます。
ポイントは、利益が出ている年に税金を先に延ばし、税負担が軽い役員退職金として受け取ることです。
御社の決算書で、法人NISAを使うといくら退職金を準備できるか試算します。
役員退職金の税金が軽い理由と試算例
役員退職金は「退職所得」として、給与とは別に計算されます。長く勤めた人ほど大きな控除が受けられ、さらに控除後の金額の2分の1だけに税金がかかります。
- 退職所得控除:在任20年までは1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円
- 課税される金額:(退職金 − 退職所得控除)× 1/2
- 在任5年以下の役員には2分の1の計算が使えないため、早めの準備が有利です
在任25年、最終の役員報酬が月100万円、功績倍率を2.0とすると、役員退職金の目安は100万円 × 25年 × 2.0 = 5,000万円です。この場合の税金は次のとおりです。
| 役員退職金 | 50,000,000円 |
|---|---|
| 退職所得控除(800万円+70万円×5年) | −11,500,000円 |
| 課税退職所得(残り × 1/2) | 19,250,000円 |
| 所得税(復興特別所得税を含む) | 5,006,984円 |
| 住民税(10%) | 1,925,000円 |
| 手取り | 43,068,016円 |
税金の合計は約693万円で、退職金に対して約14%です。同じ5,000万円を役員報酬として受け取ると、所得税と住民税の最高税率は合わせて約55%になるため、差は大きくなります。
くわしく聞きたい方は無料セミナーもどうぞ。ご自身の金額と在任年数で計算したい方は、退職金の手取りシミュレーターをお使いください。
功績倍率は会社の規模や社長の貢献によって判断されます。高すぎる退職金は税務署に経費と認められないことがあるため、役員退職金規程を作り、顧問税理士と金額を確認してください。
2019年以降の法人保険のルール
以前は保険料の全額や半分を経費にできる商品が多くありましたが、2019年の国税庁の通達改正で、解約返戻率が高い保険は経費にできる割合が制限されました。
- 最高解約返戻率が50%以下:保険料の全額を経費にできる
- 50%超70%以下:一定期間、保険料の40%を資産に計上し、残りを経費にする
- 70%超85%以下:一定期間、保険料の60%を資産に計上する
- 85%超:さらに多くの割合を資産に計上する
つまり、いまは「全額を経費にして大きく繰り延べる」ことは難しく、経費にできる割合と、解約返戻金として戻る割合のバランスで商品を選ぶ必要があります。法人NISAの設計では、社長の退任予定時期に解約返戻率が高くなる商品を選ぶことが大切です。
保険料の経理処理は契約日や商品によって異なります。実際の処理は顧問税理士にご確認ください。
向いている会社・向いていない会社
向いている会社
- 毎年安定して利益が出ていて、数年先まで見通しが立つ
- 社長の退任まで10年以上ある
- 社長の退職金を、会社の資金繰りとは別に準備しておきたい
向いていない会社
- 利益の波が大きく、保険料を払い続けられるか分からない
- 数年以内に大きな設備投資や借入金の返済を控えている
- 退任が近い(途中で解約すると、払った保険料を下回る金額しか戻らないことがあります)
従業員の退職金も一緒に考えたい場合は、中退共・企業型DC・養老保険の比較をご覧ください。
よくある質問
役員になってまだ数年ですが、それでも有利ですか?
在任5年以下の役員には2分の1の計算が使えません。そのため、早めの準備が有利です。
退任が近くても、今から始める意味はありますか?
退任が近い会社には向いていません。途中で解約すると、払った保険料を下回る金額しか戻らないことがあります。
退職金は、いくらでも高く設定してよいのですか?
高すぎる退職金は、税務署に経費と認められないことがあります。役員退職金規程を作り、顧問税理士と金額を確認してください。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の税務判断を行うものではありません。税制は2026年9月時点のものです。
