法人の保険積立金は決算書のどこを見る?解約したらいくら戻り、利益はいくら出るか
この記事の要点
- 法人保険の保険料は、貸借対照表の「保険積立金」(資産)と損益計算書の「支払保険料」(経費)に分かれて載ります。
- 解約すると、受け取った解約返戻金と「保険積立金」(簿価)の差額が、その期の益金または損金になります。
- 「今いくら戻り、利益がいくら出るか」は、決算書の簿価と保険会社の通知の解約返戻金を、契約ごとに並べると読めます。
会社で入っている保険は、決算書の2か所に分かれて載っています。
どこを見れば「今解約したらいくら戻るか」「そのとき利益がいくら出るか」が分かるのか。手順を表で説明します。
保険は決算書の2か所に載る
払った保険料は、ルールに沿って「資産」と「経費」に分けて記帳します。
| 決算書 | 科目の例 | 中身 |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | 保険積立金(投資その他の資産など) | 資産に計上した保険料の累計。取崩し分を引いた残り |
| 損益計算書 | 支払保険料(販売費及び一般管理費) | その期に経費にした保険料 |
| 損益計算書 | 雑収入・雑損失(営業外) | 解約や払済への変更で出た差額 |
貸借対照表の「保険積立金」は、あくまで帳簿上の金額(簿価)です。今解約して戻ってくるお金(解約返戻金)とは、ほとんどの場合一致しません。
科目名は会社や会計事務所によって「保険料積立金」「前払保険料」などと異なることがあります。複数の契約があると、貸借対照表には合計だけが載ります。
資産と経費の分け方(2019年改正後のルール)
定期保険と第三分野保険(医療保険など)は、2019年(令和元年)7月8日以後の契約から、「最高解約返戻率」で資産に計上する割合が決まります(法人税基本通達9-3-5の2)。
最高解約返戻率とは、保険期間を通じて解約返戻率が最も高くなる時期のその割合です。解約返戻率は、解約返戻金をそれまでに払う保険料の合計で割って求めます。
| 最高解約返戻率 | 資産に計上する額 | 資産計上の期間 | 取崩し(経費にする)期間 |
|---|---|---|---|
| 50%以下 | なし(期間に応じて経費) | なし | なし |
| 50%超70%以下 | 保険料の40% | 保険期間の前半40% | 保険期間の75%経過後から終了まで |
| 70%超85%以下 | 保険料の60% | 保険期間の前半40% | 保険期間の75%経過後から終了まで |
| 85%超 | 保険料 × 最高解約返戻率 × 90%(最初の10年)、× 70%(11年目以後) | 原則、最高解約返戻率となる期間の終了まで(最低5年) | 解約返戻金が最も高くなる期間の後から終了まで |
最高解約返戻率が70%以下で、年換算保険料が被保険者1人あたり合計30万円以下なら、資産計上をせずに処理できます。
養老保険で保険金の受取人が会社の場合は、保険料を全額資産に計上します(同9-3-4)。2019年7月8日より前の契約は、以前のルールのままです。
出典:国税庁 法人税基本通達 第9章第3節 保険料等、国税庁 No.5364-2、国税庁 定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ
ルールの全体像と個人契約との違いは、社長の保険は個人契約と法人契約どちらがよいかで解説しています。
解約すると簿価との差額が利益・損失になる
解約すると、会社は解約返戻金を受け取り、その契約の保険積立金(簿価)を取り崩します。差額がその期の益金または損金です。
| 比べた結果 | 決算書での出方 | 税務 |
|---|---|---|
| 解約返戻金 > 簿価 | 差額を雑収入 | 益金(法人税の対象) |
| 解約返戻金 < 簿価 | 差額を雑損失 | 損金 |
計算例で見てみます(説明用の数字です)。
| その契約の保険積立金(簿価) | 6,000,000円 |
|---|---|
| 今解約した場合の解約返戻金 | 9,000,000円 |
| 差額(雑収入・益金) | 9,000,000円 − 6,000,000円 = 3,000,000円 |
手元に入るお金は900万円ですが、利益として増えるのは300万円です。資産計上がない契約(最高解約返戻率50%以下など)は簿価が0円なので、戻ったお金がそのまま益金になります。
払済保険に変更したときも、変更時の解約返戻金相当額と資産計上額の差額を、益金または損金に入れます(同9-3-7の2)。
国税庁の解説では、払済への変更は、解約返戻金を収益に計上し、同じ額を保険料として一時払いしたものとして扱うとしています。出典:国税庁 法人税基本通達9-3-7の2の解説
決算書と保険会社の通知をお持ちいただければ、契約ごとの差額を一緒に計算します。
「今解約したら」を読む手順表
| 手順 | 見るもの | 確認すること |
|---|---|---|
| 1 | 貸借対照表 | 保険積立金の合計額 |
| 2 | 総勘定元帳・会計事務所の明細 | 契約(証券番号)ごとの簿価。合計が手順1と合うか |
| 3 | 損益計算書 | 支払保険料の額。契約ごとに資産と経費の割合がルールどおりか |
| 4 | 保険会社の通知・推移表 | 契約ごとの現在の解約返戻金と、その基準日 |
| 5 | 保険会社の通知 | 契約者貸付の残高があるか。ある場合の扱いを保険会社に確認する |
| 6 | 計算 | 解約返戻金 − 簿価 = 益金(または損金)。契約ごとに出して合計 |
手順2が一番大事です。合計だけで比べると、利益の出る契約と損の出る契約が打ち消し合って見えなくなります。
益金が出る年に、役員退職金など大きな経費が重なるかどうかも合わせて見ます。退職金の時期との関係は、役員退職金の相場の記事もご覧ください。
保険会社の通知・推移表と照らす方法
保険会社からは、年に1回ほど契約内容のお知らせが届きます。加入時には、年ごとの解約返戻金を示した推移表(設計書)を受け取っているはずです。
国税庁のFAQでも、各期間の解約返戻金相当額は、契約時に保険会社が示した金額(「○年目の解約返戻金△△円」など)によるとしています。
- 基準日をそろえる:通知の基準日と決算日はずれることが多いです。推移表で決算日に近い年の数字も見ます。
- 来年以降も並べる:推移表の数字と、その年の簿価の見込みを並べると、「何年後に解約すると差額がいくらか」が見えます。
- 取崩し期間を確認する:取崩し期間に入った契約は、簿価が毎年減ります。解約返戻金も減っていく時期と重なることがあります。
- 最高解約返戻率を確認する:推移表の最も高い解約返戻率が、決算書の資産計上の割合と合っているか確かめます。
証券と推移表の見方は、法人保険のセカンドオピニオン:保険証券で見る5つのポイントで詳しく説明しています。
保険積立金は、銀行が決算書を見るときにも目に入る科目です。説明できるようにしておくと安心です。銀行は決算書のどこを見るかもあわせてご覧ください。
解約返戻金の額や契約者貸付の残高は、最新の数字を保険会社に確認してください。解約は取り消せないため、保障がなくなる点も含めて判断が必要です。
よくある質問
保険積立金の額が、解約したときに戻る額ですか?
違います。保険積立金は資産に計上した保険料の累計(簿価)です。戻る額は保険会社が示す解約返戻金で、両者の差額が解約した期の益金または損金になります。
保険料を全額経費にしていた保険を解約するとどうなりますか?
資産に計上した額がないため簿価は0円です。受け取った解約返戻金の全額がその期の益金になります。
払済保険に変更した場合も利益は出ますか?
出ることがあります。変更時の解約返戻金相当額と資産計上額の差額を、その期の益金または損金に入れます(法人税基本通達9-3-7の2)。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。実際の経理処理や税額は、顧問税理士にご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
