法人保険のセカンドオピニオン:保険証券で見る5つのポイント
この記事の要点
- 保険証券、解約返戻金の推移表、直近の決算書、役員退職金規程(ある場合)があれば、ほとんどの判断ができます。
- 目的・契約の形・保障の額・戻り額のピーク・経理の処理の5つで、今の会社に合っているかを確認します。
- 2019年7月8日以後に契約した定期保険・第三分野保険は、最高解約返戻率によって経費にできる割合が決まります。契約日を必ず確認しましょう。
「付き合いで入った保険が、今の会社に合っているか分からない」。社長からよく聞くお悩みです。
法人保険は、入ったときの目的と今の会社の状況がずれていくものです。保険証券と、解約返戻金の推移表があれば、5つのポイントで見直せます。
セカンドオピニオンで用意するもの
次の4つがあれば、ほとんどの判断ができます。
- 保険証券(または契約内容のお知らせ)
- 解約返戻金の推移表(保険会社や担当者に依頼すると出してもらえます)
- 直近の決算書(「保険積立金」など、資産に計上されている額が分かります)
- 役員退職金規程(ある場合)
保険証券で見る5つのポイント
| ポイント | どこを見るか | よくあるずれ |
|---|---|---|
| 1. 目的 | 保障のためか、退職金の準備か、福利厚生か | 目的を誰も説明できない |
| 2. 契約の形 | 契約者・被保険者・受取人 | 受取人が今の目的と合っていない |
| 3. 保障の額 | 死亡保険金の額と、会社に必要な額 | 借入が増えたのに保障はそのまま |
| 4. 戻り額のピーク | 解約返戻率がいちばん高くなる時期 | ピークが社長の退任時期とずれている |
| 5. 経理の処理 | 契約日と、経費にしている割合 | 契約時期と処理のルールが合っていない |
1. 目的:何のために入っている保険か
法人保険の目的は、大きく3つです。目的が決まると、見るべき数字も決まります。
事業保障
社長に万一のとき、借入の返済や運転資金にあてる。
退職金の準備
社長や社員の退職金の財源をつくる。
福利厚生
社員の万一や退職に備える。
2. 契約の形:誰が契約し、誰が受け取るか
契約者・被保険者・受取人の組み合わせで、保険金や解約返戻金を誰が受け取るか、税金の扱いがどうなるかが決まります。会社が受け取る保険金は、原則として会社の利益(益金)になります。
3. 保障の額:多すぎも少なすぎも損
必要な保障額は、借入金の残高、固定費の数か月分、死亡退職金・弔慰金を足して計算します。計算方法は事業保障の必要保障額の記事で解説しています。
借入が減ったのに保障がそのままなら、保険料を払いすぎているかもしれません。
4. 戻り額のピーク:いつ解約すると一番戻るか
退職金の準備が目的なら、解約返戻率がいちばん高くなる時期と、社長の退任予定が合っているかが大切です。ピークを過ぎると、戻り額の割合が下がっていく保険もあります。
退任時にいくら受け取れるかは、退職金の手取りシミュレーターで確認できます。
5. 経理の処理:契約日で扱いが違う
定期保険などの保険料をどこまで経費にできるかは、2019年に国税庁の取扱いが変わりました。契約日がいつかを必ず確認します。くわしくは次の章で説明します。
保険証券を見ながら、続ける・減らす・やめるを一覧にします。診断だけのご相談もできます。
2019年の税務ルール変更で変わったこと
2019年(令和元年)7月8日以後に契約した定期保険・第三分野保険は、「最高解約返戻率」によって、保険料のうち経費にできる割合が決まります。
| 最高解約返戻率 | はじめの一定期間の処理 |
|---|---|
| 50%以下 | 原則、支払った保険料を経費に |
| 50%超〜70%以下 | 40%を資産に計上し、残りを経費に |
| 70%超〜85%以下 | 60%を資産に計上し、残りを経費に |
| 85%超 | 最高解約返戻率に応じて、さらに多くを資産に計上 |
50%超〜85%以下は、保険期間のはじめ4割の期間が資産計上の期間です。資産に計上した分は、保険期間の後半に取り崩して経費にしていきます。
つまり、今は「全額を経費にしながら積み立てる」ことは難しく、一部を経費にしながら積み立てる形が基本です。
最高解約返戻率70%以下で、年換算保険料が被保険者1人あたり30万円以下の場合などには、別の扱いがあります。2019年7月8日より前の契約は、以前のルールのままです。出典:国税庁 タックスアンサー No.5364・No.5364-2
解約・乗り換えの前に気をつけること
「合っていない」と分かっても、すぐに解約するのはおすすめしません。次の点を先に確認します。
確認すること
- 解約返戻金は会社の利益になり、その年の法人税が増えることがある
- 新しく入り直すと、年齢や健康状態で保険料が上がったり、入れなかったりする
- 資産に計上している額と、戻り額の差がどうなるか
解約以外の選択肢
- 保障額を減らして、保険料を下げる
- 払い込みを止めて、保障を小さくして続ける
- 戻り額のピークまで続け、退職金の財源にする
どれを選べるかは、保険の種類と契約内容で変わります。今の担当者との関係を大切にしたい方には、診断だけを行い、手続きは今の担当者にお願いする形もあります。
証券を集める
保険証券と推移表、決算書を用意します。
一覧にする
目的・保障額・戻り額のピークを1枚に並べます。
判断する
続ける・減らす・やめるを決めます。
よくある質問
合っていない保険は、すぐに解約したほうがいいですか?
すぐの解約はおすすめしません。解約返戻金は会社の利益になり、その年の法人税が増えることがあります。保障額を減らす、払い込みを止めて続けるなど、解約以外の選択肢もあります。
今の担当者との関係を崩さずに、見てもらうことはできますか?
できます。診断だけを行い、手続きは今の担当者にお願いする形もあります。
昔入った保険も、2019年の新しいルールで処理し直すのですか?
2019年7月8日より前の契約は、以前のルールのままです。保険料の経理処理は、顧問税理士にご確認ください。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の税務判断を行うものではありません。保険料や解約返戻金の経理処理は、顧問税理士にご確認ください。内容は2026年9月時点のものです。
