社長の保険は個人契約と法人契約どちらがよい?税金の違いと目的別の選び方
この記事の要点
- 個人契約は生命保険料控除(所得税で各区分最高4万円)、法人契約は最高解約返戻率に応じて損金になる割合が決まります。
- 個人契約の死亡保険金は「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠、法人が受け取る保険金は会社の益金です。
- 家族の生活保障は個人、事業の保障や退職金の準備は法人、と目的で分けて考えるのが基本です。
社長が生命保険に入るとき、「会社で入ったほうが経費になって得では?」というご相談をよくいただきます。
実際は、払うときの税金だけでなく、受け取るときの税金と、お金を誰が受け取るかで向き不向きが決まります。順番に見ていきます。
個人契約と法人契約の違い
ここでは、社長が被保険者になる保険を比べます。
| 個人契約 | 法人契約 | |
|---|---|---|
| 契約者(保険料を払う人) | 社長個人 | 会社 |
| 保険料の出どころ | 役員報酬(税金と社会保険料を引いた後の手取り) | 会社のお金 |
| 払うときの税務 | 生命保険料控除 | 損金または資産計上 |
| 保険金の受取人 | 家族など | 会社(法人受取の場合) |
| 受け取るときの税務 | 相続税・所得税・贈与税のいずれか | 会社の益金(法人税の対象) |
大きな違いは、お金が「家族に直接届く」か「いったん会社に入る」かです。
保険料を払うときの税金
個人契約:生命保険料控除
個人で払った保険料は、生命保険料控除として所得から差し引けます。2012年1月1日以後の契約(新制度)では、所得税の控除額は次のとおりです。
| 区分 | 所得税の控除の上限 |
|---|---|
| 一般生命保険料 | 40,000円 |
| 介護医療保険料 | 40,000円 |
| 個人年金保険料 | 40,000円 |
| 合計 | 120,000円 |
年間の保険料が80,000円を超えると、その区分の控除は一律40,000円です。高額な保険料を個人で払っても、控除の効果は限られます。
令和8年分以後は、23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料の控除の上限が60,000円に引き上げられます(合計の上限は120,000円のまま)。出典:国税庁 No.1140 生命保険料控除
法人契約:最高解約返戻率で決まる
会社が契約者・受取人の定期保険や医療保険(第三分野保険)は、期間の経過に応じて損金にするのが原則です(法人税基本通達9-3-5)。
ただし2019年(令和元年)7月8日以後の契約は、最高解約返戻率が50%を超えると、保険料の一部を資産に計上します(同9-3-5の2)。
| 最高解約返戻率 | 資産に計上する割合 | 資産計上の期間 |
|---|---|---|
| 50%以下 | なし(原則どおり損金) | なし |
| 50%超70%以下 | 保険料の40% | 保険期間の前半40% |
| 70%超85%以下 | 保険料の60% | 保険期間の前半40% |
| 85%超 | 最初の10年は「保険料 × 最高解約返戻率 × 90%」、11年目以後は「× 70%」 | 原則、最高解約返戻率となる期間まで |
資産に計上した分は、50%超85%以下なら保険期間の75%を過ぎてから、85%超なら解約返戻金が最も多くなった後から、少しずつ損金にしていきます。
最高解約返戻率が70%以下で、年換算保険料(被保険者1人あたりの合計)が30万円以下の場合は、資産計上をせずに原則どおり処理できます。
この表は定期保険と第三分野保険のルールです。養老保険や終身保険は扱いが異なります。出典:国税庁 法人税基本通達 第9章第3節、国税庁 No.5364-2
「全額損金で節税」と言える保険は、今はほとんどありません。損金になった分は、受け取るときに益金として戻ってくる点も押さえておきましょう。
いま入っている保険が個人契約と法人契約のどちらに向いているか、証券を見ながら整理します。
保険金を受け取るときの税金
個人契約:契約の形で税金が変わる
| 契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | かかる税金 |
|---|---|---|---|
| 社長 | 社長 | 妻・子 | 相続税 |
| 妻 | 社長 | 妻 | 所得税(一時所得など) |
| 妻 | 社長 | 子 | 贈与税 |
相続税の対象になる死亡保険金には、相続人が受け取る場合に非課税枠があります。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
たとえば法定相続人が妻と子2人の3人なら、1,500万円までは相続税の計算に入りません。相続人でない人が受け取った分には、この枠は使えません。
出典:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金、国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
非課税枠を使った相続対策は、生命保険と相続の記事で詳しく解説しています。
法人契約:会社の益金になる
会社が受け取った保険金は、会社の益金です。資産に計上していた分があれば、それを取り崩し、差額が益金になります。
家族に渡すには、会社から死亡退職金や弔慰金として支払う形になります。死亡退職金にも、生命保険金とは別に「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります(死亡後3年以内に支給額が確定したものなど)。
そのためには、役員退職金規程を整え、支給額の根拠を説明できるようにしておくことが大切です。
出典:国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
目的別:どちらが向くか
| 目的 | 向く契約 | 理由 |
|---|---|---|
| 家族の生活費 | 個人 | 受取人の家族に直接届き、会社の業績に左右されない |
| 相続税の納税資金 | 個人 | 死亡保険金の非課税枠をそのまま使える |
| 借入金の返済・事業の継続 | 法人 | 会社にお金が入り、返済や運転資金に充てられる |
| 社長の退職金の準備 | 法人 | 解約返戻金を退職金の原資にできる |
| 病気やけがの入院費 | 個人が基本 | 本人の治療費のため。休業中の会社の資金は法人で準備 |
どちらか一方に決める必要はありません。家族の分は個人、会社の分は法人、と役割で分けるのが基本です。
会社に必要な保障額は事業保障の考え方や必要保障額の計算ツール、退職金の目安は役員退職金の相場の記事で確認できます。
法人から個人への名義変更の注意
法人で入った保険を、退職時などに社長個人へ名義変更(譲渡)する方法があります。この場合、契約の評価額が社長への退職金や給与として扱われます。
- 評価額は原則、名義変更した時点の解約返戻金の額です。
- ただし2021年7月1日以後の譲渡で、法人税基本通達9-3-5の2の対象となる契約は、解約返戻金が資産計上額の70%未満なら、資産計上額で評価します。
解約返戻金が低い時期に名義を移して評価を下げる方法は、使えなくなっています。名義変更を考えるときは、税理士とも相談しながら進めてください。
出典:国税庁 保険契約等に関する権利の評価に関する所得税基本通達の解説
よくある質問
法人で入れば保険料は全部経費になりますか?
なりません。2019年7月8日以後の契約は、最高解約返戻率が50%を超えると保険料の一部を資産に計上します。損金になるのは、最高解約返戻率が50%以下などの場合です。
個人と法人の両方で入っても問題ありませんか?
問題ありません。家族の生活費や相続税の納税資金は個人、借入金の返済や退職金の準備は法人、と目的ごとに分けて入るのが一般的です。
法人が受け取った死亡保険金を家族に渡すときの税金は?
会社から死亡退職金や弔慰金として支払います。死亡退職金は相続税の対象になり、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が、生命保険金とは別に使えます。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。税務の取扱いは契約の内容によって異なり、制度は変わることがあるため、契約や名義変更の前に税理士や保険会社の案内でご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
