中退共と企業型DCは併用できる?組み合わせ方・費用・退職時の支払いの違い
この記事の要点
- 中退共と企業型DCは同じ会社で併用できる。中退共の掛金はDCの「他制度掛金相当額」に入らないので、DCの上限は減らない
- よくある形は「中退共で全員に退職金の土台、DCで老後資金を上乗せ」。費用と事務はDCのほうが重い
- 中途退職者への支払いは大きく違う。中退共は退職時に本人の口座へ、DCは60歳まで受け取れず資産を移す
従業員の退職金を考えるとき、「中退共と企業型DC、どちらにするか」で迷う社長は多いです。
実は、2つは同時に使えます。この記事では、併用の形と、それぞれの違いを表で整理します。
中退共と企業型DCは併用できる
厚生労働省の確定拠出年金Q&Aでは、退職金共済は企業型DCの代替制度として認められています。同じ事業所に、DCの加入者と退職金共済の被共済者がいることも認められています。
気になるのは、DCの掛金の上限への影響です。
| 企業型DCの上限(月額) | 55,000円 -(他制度掛金相当額) |
|---|---|
| 他制度掛金相当額に入る制度 | DB(確定給付企業年金)、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、公務員共済、私学共済 |
| 中退共の掛金 | 上の一覧に入っていない。差し引かれない |
つまり、中退共に入っていても、DCの上限はそのまま使えます。DBがない会社なら、DCは月55,000円まで出せます。
DCの上限は2026年12月から月62,000円に引き上げ予定です。詳しくは企業型DCの導入手順と費用の記事をご覧ください。出典:厚生労働省 確定拠出年金制度の概要、厚生労働省 確定拠出年金Q&A(No.48-1)
併用の組み合わせ例
役割を分けると、組み合わせ方が決めやすくなります。以下は一般的な形の例です。
| 組み合わせ | 中退共の役割 | 企業型DCの役割 | ねらい |
|---|---|---|---|
| 基本形 | 全員の退職金の土台 | 会社の掛金で老後資金を上乗せ | 退職時のお金と老後のお金を分ける |
| 選択制DCを足す形 | 会社負担の退職金 | 給与の一部を掛金にするかを本人が選ぶ | 会社の追加負担を抑えて選択肢を増やす |
| 3制度の形 | 全員の退職金の土台 | 老後資金の上乗せ | 養老保険で会社にも資金を残す |
- 基本形は、まず中退共で始め、会社が慣れてからDCを足す順番でも組めます
- 選択制DCは、社会保険料が下がる一方で、将来の年金や手当が減る可能性があります。会社はその点も含めて説明する必要があります
- 養老保険の福利厚生プランは、加入の条件を守らないと給与扱いになります。ハーフタックスプランの要件の記事で解説しています
新しく中退共に入ると、国の掛金助成も使えます。金額は中退共の助成金の記事をご覧ください。
社員の人数と年齢から、中退共とDCの配分を一緒に考えます。
費用と事務の違い
| 中退共 | 企業型DC | |
|---|---|---|
| 掛金 | 月5,000円〜30,000円の16種類 | 上限の範囲で規約で決める |
| 掛金の税務 | 法人は全額損金 | 会社の掛金は全額損金 |
| 掛金以外の費用 | DCのような運営管理機関・資産管理機関の手数料はない | 導入費用、運営管理・資産管理の手数料、投資教育の費用 |
| 国の助成 | 新規加入・増額で掛金助成あり | なし |
| 始める手続き | 申込書を窓口に出す | 労使の同意と、地方厚生(支)局への規約の承認申請 |
| 続ける事務 | 掛金の口座振替、加入・退職の届出 | 掛金の納付、加入者の管理、継続の投資教育、規約の変更手続き |
| 運用 | 機構がまとめて行う | 従業員が自分で選ぶ |
DCの手数料には、会社単位でかかるものがあります。社員が少ないと、1人あたりの負担が重くなりがちです。見積もりは5年間の合計で比べましょう。
DCの手数料の金額は運営管理機関や人数で変わるため、ここでは項目だけを示しています。出典:中退共 制度の特色、厚生労働省 確定拠出年金Q&A
中途退職した社員への支払われ方の違い
併用でいちばん差が出るのが、社員が途中で辞めたときです。
| 中退共 | 企業型DC | |
|---|---|---|
| 受け取る時期 | 退職したとき | 原則60歳から |
| お金の流れ | 本人が請求し、機構から本人の口座へ振り込み | 本人の資産を、転職先の企業型DCやiDeCoなどへ移す |
| 会社が受け取れるか | 受け取れない | 受け取れない(本人の資産) |
| 注意点 | 加入1年未満は支給なし、2年未満は掛金を下回る | 資格を失ってから6か月以内に手続きしないと、国民年金基金連合会へ自動で移される |
- 中退共は、会社が退職届を出し、本人が請求書を書いて請求します。退職金は本人の口座へ直接振り込まれます
- DCで自動移換になると、資産は運用されないまま手数料だけが引かれます。退職する社員には、移換の手続きを必ず案内しましょう
辞めた社員にすぐ退職金を渡したいなら中退共、老後まで確実に残したいならDC、という違いになります。
出典:中退共 退職金請求から支払いまでの流れ、厚生労働省 確定拠出年金制度の概要(ポータビリティ)、厚生労働省 確定拠出年金における自動移換について
併用が向く会社
| 会社の状況 | 考え方 |
|---|---|
| 退職金制度がまだない | まず中退共で土台を作る。助成も使える |
| 中退共の上限(月30,000円)では足りない | DCを上乗せして老後資金を厚くする |
| 採用で「DCあり」を打ち出したい | 中退共を残したままDCを足す |
| 社員が数人で事務担当もいない | DCの手数料と事務が重い。中退共だけで十分な場合も多い |
| 退職金を会社の資金としても準備したい | 中退共・DCは本人のお金。養老保険などとの組み合わせを検討 |
制度の全体像は従業員の退職金制度の比較記事で、3つの選択肢を並べて比べています。
よくある質問
中退共に入っていると、企業型DCの掛金の上限は減りますか?
減りません。DCの上限から差し引かれる「他制度掛金相当額」はDBや厚生年金基金などの掛金で、中退共の掛金は含まれません。
同じ社員を中退共とDCの両方に入れられますか?
入れられます。同じ事業所に両制度の加入者がいることは認められています。たとえば全員を中退共に入れ、DCで上乗せする形があります。
社員が辞めたとき、DCのお金はすぐ渡せますか?
DCは原則60歳まで受け取れません。辞めた社員は資産を転職先のDCやiDeCoなどへ移します。退職時にすぐ渡す退職金は、中退共で準備するのが一般的な分け方です。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。拠出限度額や加入条件、手続きは改正で変わることがあるため、導入の前に厚生労働省、中退共、運営管理機関の案内でご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
