養老保険の福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)の要件と注意点
この記事の要点
- 契約者は会社、被保険者は役員・従業員、死亡保険金は遺族、満期保険金は会社。この形のときに保険料の2分の1が損金、2分の1が資産計上です。
- 役員や特定の従業員だけを加入させると、損金になるはずの2分の1は本人への給与として扱われます。原則は全員加入です。
- 満期金や解約返戻金は会社に入ります。資産に計上した額との差額は、その期の益金または損金になります。
従業員の退職金や死亡時の保障を、会社の資金として準備する方法に「養老保険の福利厚生プラン」があります。保険料の半分が損金になることから、「ハーフタックスプラン」とも呼ばれます。
ただし、半分を損金にできるのは、決められた契約の形と加入のルールを守ったときだけです。この記事では、国税庁の通達をもとに要件を整理します。
養老保険の福利厚生プランとは
養老保険は、保険期間中に亡くなれば死亡保険金、満期まで生きていれば満期保険金が出る生命保険です。
福利厚生プランでは、会社が契約者になって従業員を被保険者にし、次のように受取人を分けます。
| 立場 | 誰がなるか |
|---|---|
| 契約者(保険料を払う人) | 会社 |
| 被保険者 | 役員・従業員 |
| 死亡保険金の受取人 | 被保険者の遺族 |
| 満期保険金の受取人 | 会社 |
在職中に亡くなったときは遺族に保険金が直接支払われ、無事に満期を迎えれば会社にお金が戻ります。戻ったお金は、退職金の原資などに使えます。
契約形態で変わる保険料の扱い(通達9-3-4)
会社が契約者になる養老保険の保険料は、法人税基本通達9-3-4で、受取人の組み合わせごとに扱いが決まっています。
| 死亡保険金の受取人 | 満期保険金の受取人 | 保険料の扱い |
|---|---|---|
| 会社 | 会社 | 全額を資産に計上(契約が終わるまで) |
| 被保険者の遺族 | 被保険者 | 全額がその役員・従業員への給与 |
| 被保険者の遺族 | 会社 | 2分の1を資産に計上し、残りは期間の経過に応じて損金。 ただし役員や特定の使用人のみが被保険者なら、残りは給与 |
福利厚生プランは、表の3つ目の形です。半分を損金にできるのは、死亡保険金が遺族に支払われる分を、従業員全体のための福利厚生と見ているためです。
特約部分の保険料は、この区分とは別に扱われます。出典:国税庁 法人税基本通達 第3節 保険料等(9-3-4)、国税庁 No.5363 養老保険の保険料の取扱い
今の契約形態で、保険料がどう扱われているかを一緒に確認します。
普遍的加入:全員を入れるのが原則
通達には「役員又は部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合」は、損金になるはずの2分の1が給与になる、というただし書きがあります。
そのため、従業員が広く加入している「普遍的加入」であることが前提になります。
| 加入の決め方 | 考え方 |
|---|---|
| 役員だけ | ただし書きに当たり、2分の1は給与 |
| 部課長・主任以上など役職で限定 | 特定の使用人のみに当たるおそれが高い |
| 全員加入 | 原則の形 |
| 勤続年数・年齢などで資格を設ける | 決めた基準どおりに運用されているかが問われる |
国税不服審判所の裁決には、役員と主任以上の従業員を被保険者にしていた会社の例があります。会社は「勤続15年以上かつ40歳以上」という基準を示しましたが、基準に合わない人も加入していたため、実際は役職で選んでいたと判断されました。結論は、保険料の2分の1が給与とされています。
加入資格を設けるなら、退職金規程などに書き、その基準どおりに全員を扱うことが大切です。
出典:国税不服審判所 平成5年8月24日裁決(裁決事例集No.46)
満期・解約・死亡のときの扱い
通達では、資産に計上した保険料は、保険事故の発生や解約などで契約が終わる時まで資産に残します。契約が終わったときの流れは次のとおりです。
| 場面 | お金の行き先 | 会社の経理 |
|---|---|---|
| 満期 | 満期保険金は会社へ | 資産計上額を取り崩し、受取額との差額を益金または損金に |
| 中途解約 | 解約返戻金は会社へ | 資産計上額を取り崩し、返戻金との差額を益金または損金に |
| 在職中の死亡 | 死亡保険金は遺族へ直接 | 契約が終わるため、資産計上額を取り崩す |
満期金や返戻金を退職金として本人に支払うときは、保険とは別に、会社から退職金を支給する形になります。支給の根拠として、退職金規程を整えておきましょう。
満期や解約で益金が出る年は、利益が大きくなります。退職金の支払いや設備投資の時期と合わせて考えると、利益の波を抑えやすくなります。
具体的な仕訳は、顧問税理士にご確認ください。
向く会社と注意点
| 向く会社 | 注意点 |
|---|---|
| 従業員の死亡保障と退職金準備を一緒に用意したい | 全員加入が原則のため、人数が増えると保険料も増える |
| 退職金の原資を会社の資産として持っておきたい | 早い時期の解約は、返戻金が払った保険料を下回ることがある |
| 勤続の長い社員が多く、定着を重視している | 満期・解約の年は益金が出て、利益が大きくなる |
| 毎年の保険料を安定して払える利益がある | 加入資格を規程に書き、基準どおりに運用する必要がある |
中退共は掛金が全額損金になり、国の助成もありますが、退職金は本人に直接支払われます。会社の資金として持てる養老保険とは、性格が違います。
比較は従業員の退職金制度の比較記事、中退共の助成は中退共の助成金の記事、確定拠出年金は企業型DCの導入手順の記事で解説しています。
よくある質問
社長だけで加入しても2分の1は損金になりますか?
なりません。通達のただし書きにより、役員や特定の使用人のみを被保険者とする場合は、残りの2分の1は本人への給与として扱われます。
パートや入社したばかりの人も入れる必要がありますか?
全員加入が原則です。勤続年数などで加入資格を設ける場合は、規程に書き、その基準どおりに運用することが求められます。
満期保険金を受け取ったら、どう処理しますか?
満期保険金は会社に入ります。資産に計上していた額を取り崩し、受け取った額との差額をその期の益金または損金として処理します。具体的な仕訳は顧問税理士にご確認ください。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。税務の取扱いは変わることがあるため、契約や経理処理の前に顧問税理士などにご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
