経営セーフティ共済の使い方と解約のタイミング|返戻率・益金・再加入ルール
この記事の要点
- 本来の目的は、取引先が倒産したときに無担保・無保証人・無利子で借りられることです。掛金は法人なら損金になります。
- 解約手当金は40か月以上で掛金の全額、12か月未満は戻りません。受け取った解約手当金は法人の益金になります。
- 2024年10月1日以後に解約して入り直すと、解約の日から2年を経過する日までに払う掛金は損金になりません。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、「入ったけれど、いつ解約すればよいか分からない」という相談が多い制度です。
入るときより、出るときのほうが判断が難しい制度です。この記事では、制度の使い方と解約のタイミングの考え方に絞って説明します。他の制度との比較は社長の退職金準備の3つの方法をご覧ください。
本来の目的:取引先が倒産したときの貸付
この制度は、取引先の倒産で売掛金などが回収できなくなったとき、連鎖倒産を防ぐための資金を借りられる共済です。
| 借りられる額 | 回収が難しくなった売掛金債権等の額と、掛金総額の10倍の額のいずれか少ない額(上限8,000万円) |
|---|---|
| 条件 | 無担保・無保証人・無利子 |
| 返済期間 | 据置期間6か月を含め、5,000万円未満は5年、5,000万円以上6,500万円未満は6年、6,500万円以上は7年 |
| 注意点 | 借りた額の10分の1に相当する額が、納めた掛金から控除されます |
このほか、取引先の倒産がなくても、解約手当金の95%の範囲で借りられる「一時貸付金」があります。こちらは利率年0.9%、期間1年の一括返済です。
節税の面ばかりが注目されますが、「いざというときに借りられる枠」が本来の価値です。解約を考えるときは、この枠がなくなることも頭に入れておきます。
出典:中小機構 経営セーフティ共済 制度のしおり、中小機構 制度の概要
掛金のルールと損金算入
| 入れる会社 | 引き続き1年以上事業を行っている中小企業者(業種ごとの資本金・従業員数の基準あり) |
|---|---|
| 掛金月額 | 5,000円から20万円まで、5,000円単位で選べます。増額・減額もできます |
| 積立の上限 | 掛金総額800万円まで |
| 税金の扱い | 法人は損金、個人事業主は事業所得の必要経費 |
たとえば月20万円で払うと、40か月で総額800万円に届きます。上限に届いた後は、それ以上は積み立てられません。
掛金を損金にすると、その年の利益は減ります。ただし会社のお金が外に出ていることに変わりはありません。資金繰りに無理のない掛金にするのが前提です。
解約手当金はいくら戻る?
自分から解約する「任意解約」の場合、戻る割合は掛金を納めた月数で決まります。
| 掛金を納めた月数 | 解約手当金の割合 |
|---|---|
| 1か月から11か月 | 0%(戻りません) |
| 12か月から23か月 | 80% |
| 24か月から29か月 | 85% |
| 30か月から35か月 | 90% |
| 36か月から39か月 | 95% |
| 40か月以上 | 100% |
40か月を過ぎるまでは、解約すると掛金の一部を失います。早めに解約する可能性があるなら、加入前にこの表を確認しておきます。
解約には任意解約のほか、機構解約・みなし解約があります。借入れを受けた場合は、掛金から控除される額があります。出典:中小機構 制度のしおり
今の納付月数と掛金総額から、いつ解約するといくら戻るかを一緒に整理します。
解約手当金は益金になる
掛金を損金にしてきた法人が解約手当金を受け取ると、その額は益金(会社の利益)になります。個人事業主は事業所得の収入金額です。
- 1掛金を払う損金で利益が減る
- 2積み立てる上限800万円
- 3解約する手当金は益金
- 4利益が増えるその年の税金に影響
つまり、税金がなくなるのではなく、損金にする年と益金になる年がずれる仕組みです。利益が大きい年に解約すると、その年の法人税等が増えます。
解約のタイミングの考え方
益金が出る年を、損金が多く出る年や利益が少ない年に合わせるのが一般的な考え方です。
| 場面 | 考え方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 赤字が見込まれる年 | 解約手当金の益金で赤字を埋める | 繰越欠損金の使い方との兼ね合い |
| 役員退職金を払う年 | 退職金の損金と解約手当金の益金をぶつける | 退職金の額が適正か、支給の時期 |
| 大きな修繕・設備の年 | 一度に出る費用と合わせる | 費用が本当にその年の損金になるか |
| 利益が大きい年 | 原則として避ける | 解約で税負担が増えやすい |
よく使われるのが、社長の退任の年に解約し、役員退職金の財源にする形です。退職金の額は「功績倍率」などで考えます。詳しくは役員退職金の相場と適正額の決め方で解説しています。
解約の前に確認したいことは次の3つです。
- 納付月数が40か月を超えているか
- その年の利益の見込みと、損金が出る予定
- 解約すると、取引先倒産時の借入れ枠もなくなること
利益と損金の見込みは決算の数か月前でないと読みにくいものです。決算の前に顧問税理士と試算してから解約を決めるのが安全です。
2024年10月からの再加入ルール
以前は、解約してすぐ入り直し、また掛金を損金にする使い方ができました。2024年度の税制改正で、この扱いが変わっています。
新しいルール:2024年10月1日以後に共済契約を解約し、その後に再び加入した場合、解約の日から2年を経過する日までの間に払う掛金は、損金(個人事業主は必要経費)になりません。
| 時期 | 再加入した場合の掛金の扱い |
|---|---|
| 解約の日から2年を経過する日まで | 損金にならない(法人は資産として計上) |
| その後 | 損金にできる |
制度そのものの手続きは変わっていないため、再加入自体はできます。変わったのは税金の扱いです。「解約して、また入り直せばよい」と考えていた会社は、2年間の空白を前提に計画を立て直す必要があります。
出典:中小機構「税制の特例に関する内容の変更について」、国税庁 令和6年度 法人税関係法令の改正の概要
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よくある質問
加入から1年たたずに解約したら、いくら戻りますか?
任意解約の場合、掛金を納めた月数が11か月以下なら解約手当金はありません。12か月以上で80%、40か月以上で100%と、月数に応じて割合が上がります。
解約手当金を受け取ったら、税金はどうなりますか?
掛金を損金にしていた法人では、解約手当金は益金になります。利益が大きい年に受け取るとその年の税負担が増えるため、赤字の年や役員退職金を払う年に合わせる考え方が一般的です。
解約して、すぐに入り直すことはできますか?
加入の手続きはできます。ただし2024年10月1日以後に解約して再加入した場合、解約の日から2年を経過する日までに払う掛金は損金になりません。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。制度の内容や税務の取扱いは変わることがあるため、加入・解約の前に中小機構の案内と顧問税理士にご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
