社長の退職金準備の3つの方法:小規模企業共済・経営セーフティ共済・法人保険を比較
この記事の要点
- 小規模企業共済は社長個人が掛金を払い、全額が所得控除になります。経営セーフティ共済と法人保険は会社が払います。
- 経営セーフティ共済は掛金が全額損金で、40か月以上で全額戻ります。解約する年と退職金を払う年をそろえるのがポイントです。
- 法人保険は損金になる割合が商品で変わりますが、積立額に共済のような上限がなく、在任中の万一には会社に保険金が入ります。
「自分の退職金、何で準備すればいいのか」。社長からよく受けるご質問です。よく使われる方法は3つあります。違いを1枚の表にまとめました。
3つの方法の比較表
| 小規模企業共済 | 経営セーフティ共済 | 法人保険 | |
|---|---|---|---|
| 払う人 | 社長個人 | 会社 | 会社 |
| 掛金(月額) | 1,000円〜7万円 | 5,000円〜20万円 | 商品による |
| 積立の上限 | なし | 総額800万円 | 商品による |
| 税の扱い | 全額が所得控除 | 全額が損金 | 一部が損金 |
| 受け取る人 | 社長個人 | 会社 | 会社 |
| 解約で掛金が全額戻る目安 | 納付240か月 | 納付40か月 | 商品による |
| 万一の保障 | なし | なし | あり |
ざっくり言うと、個人の節税なら小規模企業共済、会社の利益の繰り延べなら経営セーフティ共済、保障も兼ねるなら法人保険です。
小規模企業共済
国の機関である中小機構が運営する「経営者の退職金制度」です。社長個人が掛金を払い、退任時に個人で受け取ります。
- 1社長が加入役員登記が必要
- 2掛金を払う全額が所得控除
- 3退任する一括か分割を選ぶ
- 4共済金を受取一括は退職所得
加入できるのは、常時使う従業員が20人以下の会社の役員です。商業(卸売・小売)とサービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下です。
| 受け取り方 | 税金の扱い |
|---|---|
| 一括 | 退職所得 |
| 分割(60歳以上、共済金300万円以上) | 公的年金等の雑所得 |
| 一括と分割の併用 | それぞれの区分 |
よいところ
- 掛金は全額が所得控除
- 500円単位で金額を変えられる
- 掛金の範囲内で事業資金を借りられる
注意点
- 12か月未満で解約すると戻りなし
- 240か月未満の解約は掛金合計を下回る
- 65歳未満で病気・けが以外の理由で退任すると、受取額が少ない区分(準共済金)になる
役員退職金と同じ時期に一括で受け取ると、退職所得の計算に影響することがあります。受け取る年は顧問税理士とご相談ください。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
本来は、取引先が倒産したときに資金を借りるための制度です。掛金が全額損金になり、40か月以上で全額戻るため、社長の退職金の財源にも使われています。
- 1会社が加入1年以上の事業が条件
- 2掛金を払う全額が損金
- 3退任の年に解約手当金は益金
- 4役員退職金損金で相殺
ポイントは、解約する年と退職金を払う年をそろえることです。解約手当金は会社の益金になるため、退職金の損金とぶつけて税負担をならします。
| 掛金を納めた月数 | 戻る割合(任意解約) |
|---|---|
| 12か月未満 | なし |
| 12か月以上 | 8割以上 |
| 40か月以上 | 全額 |
2024年10月からのルール:2024年10月1日以降に解約して再び加入した場合、解約の日から2年を経過する日までに払う掛金は損金になりません。「解約してすぐ入り直す」使い方には注意が必要です。
よいところ
- 掛金は全額が損金
- 40か月以上で全額戻る
- 取引先の倒産時に、無担保・無保証人で借りられる
注意点
- 積立は総額800万円まで
- 解約手当金は会社の益金になる
- 解約後2年以内の再加入は掛金が損金にならない
御社の利益と社長の年齢で、3つの方法をどう組み合わせるか試算します。
法人保険(法人NISA)
会社が契約者、社長が被保険者の保険です。退任時に解約し、解約返戻金を役員退職金の財源にします。当社ではこの方法を「法人NISA」と呼んでいます。国のNISAとは別のものです。
- 1会社が契約社長が被保険者
- 2保険料を払う一部が損金
- 3退任時に解約返戻金は益金
- 4役員退職金損金で相殺
よいところ
- 積立額に共済のような上限がない
- 在任中の万一には、会社に保険金が入る
- 退任時期に合わせて商品を選べる
注意点
- 損金になる割合は商品で変わる
- 早く解約すると払った額を下回る
- 商品選びと経理に専門家の確認が必要
仕組みと2019年以降の経理ルールは、法人NISAの記事でくわしく解説しています。
組み合わせ例と始め方
3つは併用できます。役割を分けると考えやすくなります。
| 社長の状況 | 組み合わせの例 |
|---|---|
| まず個人の税金を減らしたい | 小規模企業共済から始める |
| 会社の利益が毎年出ている | 小規模企業共済 + 経営セーフティ共済 |
| 退職金を厚くし、保障も欲しい | 2つの共済 + 法人保険で上乗せ |
退職金の目標を決める
退任時期と必要な金額を決めます。
財源を割り振る
個人と会社、どこで積むかを決めます。
受け取る年を設計する
解約と支給の時期をそろえます。
役員退職金の手取りは、退職金の手取りシミュレーターで確認できます。
- 役員退職金規程を作っておく
- 共済は解約時期で戻る額が変わる
- 受け取る年は顧問税理士と決める
よくある質問
3つの方法は、併用してもいいのですか?
併用できます。たとえば会社の利益が毎年出ているなら、小規模企業共済と経営セーフティ共済を組み合わせる例があります。
経営セーフティ共済を解約して、すぐ入り直してもいいですか?
2024年10月1日以降に解約して再び加入した場合、解約の日から2年を経過する日までに払う掛金は損金になりません。「解約してすぐ入り直す」使い方には注意が必要です。
小規模企業共済と役員退職金を、同じ年に受け取っても大丈夫ですか?
役員退職金と同じ時期に一括で受け取ると、退職所得の計算に影響することがあります。受け取る年は顧問税理士とご相談ください。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の税務判断を行うものではありません。実際の処理は顧問税理士にご確認ください。共済の加入条件や掛金、解約手当金の詳細は、中小機構の案内でご確認ください。内容は2026年9月時点のものです。
