決算前にできる節税と、やってはいけない節税
この記事の要点
- 決算賞与、短期前払費用、少額減価償却資産、経営セーフティ共済は、決算前でも間に合う方法です。ただし、どれも要件を満たすことが前提です。
- 役員報酬は期中に自由に変えられません。決算直前に上げても下げても、節税にはなりません。
- 架空経費や売上の先送りは節税ではありません。利益を減らしすぎると、銀行の評価も下がります。
決算が近づき、思ったより利益が出ていると分かると「何か経費を使ったほうがいいのでは」と考える社長は多いです。
決算前でも間に合う方法はあります。ただし、ルールを外すと損金にならず、かえって税金が増えることもあります。この記事では、使える方法と避けたい方法を分けて説明します。
決算前にできる節税の一覧
まず全体を表で確認します。どれも「お金が出ていく」か「後で益金として戻る」方法です。手元の現金とのバランスを見て選びます。
| 方法 | ポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 決算賞与(未払賞与) | 期末までに通知し、期末から1か月以内に払えば、今期の損金にできる | 従業員への賞与が対象。役員は対象外 |
| 短期前払費用 | 1年以内に受けるサービスの代金を前払いし、払った期の損金にできる | 毎年続けることが条件 |
| 少額減価償却資産の特例 | 40万円未満の資産を、年300万円まで一度に損金にできる | 期末までに取得し、使い始めていること |
| 経営セーフティ共済 | 掛金は損金。1年以内の前納分も損金にできる | 解約手当金は益金になる |
| 役員報酬 | 決算前の変更では節税にならない | 改定は原則、期首から3か月以内 |
決算賞与(未払賞与)の3つの要件
従業員への賞与は、原則として払った期の損金です。ただし、次の3つを全て満たせば、期末までに払っていなくても今期の損金にできます(法人税法施行令72条の3)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 1.通知 | 支給額を各人別に、かつ、同じ時期に支給を受ける全ての従業員に、期末までに通知する |
| 2.支払 | 通知した額を、期末の翌日から1か月以内に払う |
| 3.経理 | 通知した期に、未払賞与として損金経理する |
よくある失敗が「支給日に在籍している人だけに払う」という条件をつけることです。この場合、通知をしたことにならず、要件を満たしません(法人税基本通達9-2-43)。
通知は書面で残しておきます。パートタイマーと正社員で賞与の支給時期を分けている場合は、その区分ごとに判定できます(同9-2-44)。
出典:国税庁 No.5350 使用人賞与の損金算入時期、国税庁 法人税基本通達 第8款 使用人給与
短期前払費用と少額減価償却資産
短期前払費用
家賃や保守料など、決まったサービスを続けて受ける契約では、1年以内の分を前払いすると、払った期の損金にできます(法人税基本通達2-2-14)。
- 対象は、払った日から1年以内に受けるサービスの代金です。
- 実際に払うことが必要です。未払いの計上では使えません。
- 「継続して」払った期の損金にしていることが条件です。今年だけ前払いし、翌年は月払いに戻すといった使い方はできません。
一度始めると、翌年以降も前払いを続けます。最初の年だけ損金が増え、2年目からは元に戻る点も押さえておきます。
少額減価償却資産の特例
パソコンや備品などを買ったとき、本来は数年に分けて減価償却します。中小企業者等には、一度に損金にできる特例があります。
| 対象 | 青色申告をしている中小企業者等(常時使用する従業員が400人以下) |
|---|---|
| 1つあたりの金額 | 40万円未満(2026年3月31日までに取得したものは30万円未満) |
| 年間の上限 | 合計300万円まで |
| 期限 | 2029年3月31日までに取得し、事業に使い始めたもの |
2026年度の税制改正で、2026年4月1日以後に取得したものから40万円未満に広がりました。期末までに届いて、実際に使い始めていることが必要です。注文しただけでは対象になりません。
出典:国税庁 法人税基本通達2-2-14、国税庁 令和8年度 法人税関係法令の改正の概要、中小企業庁 少額減価償却資産の特例
今期の利益見込みと手元の資金から、無理のない対策を一緒に整理します。
経営セーフティ共済と役員報酬
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金は、法人なら損金になります。掛金は月5,000円から20万円の範囲で選べます。
前納もでき、前納の期間が1年以内のものは損金にできます。1年を超える前納分は対象外です(租税特別措置法関係通達66の11-3)。前納の申し出には締切があるため、決算月の前月には手続きを確認しておきます。
ただし、解約手当金を受け取ると益金になります。解約のタイミングや、2024年10月からの再加入ルールは経営セーフティ共済の使い方と解約のタイミングで解説しています。
出典:中小機構 経営セーフティ共済の特長、中小機構 掛金を前納したい、国税庁 措置法通達第66条の11関係
役員報酬は期中に変えられない
「利益が出たから、残りの月の役員報酬を上げよう」という方法は使えません。役員報酬を損金にするには、原則として毎月同じ額で払います(定期同額給与)。
- 改定できるのは、原則として期首から3か月以内です。
- 期の途中で上げた分は、損金になりません。
- 減額できるのは、役職の変更や経営状況の著しい悪化など限られた場合です。一時的な資金繰りの都合や、業績目標に届かないことは当たりません。
役員報酬は、決算前ではなく期首に決めるものです。決め方は役員報酬の決め方をご覧ください。
やってはいけない節税
| やってはいけないこと | なぜだめか |
|---|---|
| 架空経費 | 実際にない経費の計上は脱税です。帳簿の虚偽記載などがあると、重加算税の対象になります。 |
| 売上の先送り | 今期の売上を翌期に回すと、今期の申告が過少になります。修正が必要になり、加算税や延滞税がかかります。書類の改ざんを伴えば重加算税の対象です。 |
| 必要のない買い物 | 100万円使って減る税金は、その一部です。残りは会社のお金が減っただけです。 |
| 利益を減らしすぎる | ギリギリの黒字や赤字の決算書は、銀行の評価を下げます。借りたいときに借りにくくなります。 |
「税金を払うくらいなら使ったほうがいい」と考えがちですが、使えばその分お金は減ります。税金を払って手元に残すほうが、会社の体力は残ります。
特に、来年以降に融資を考えているなら、利益の出し方にも気を配ります。銀行がどこを見るかは銀行は決算書のどこを見る?で整理しています。
出典:国税庁 法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
よくある質問
決算賞与は、期末までに払わないといけませんか?
期末までに支給額を全員に各人別に通知し、期末の翌日から1か月以内に払い、今期に損金経理すれば、今期の損金にできます。支給日に在籍している人だけに払うという条件をつけると、要件を満たしません。
決算月に役員報酬を上げれば、節税になりますか?
なりません。役員報酬の改定は原則として期首から3か月以内で、期の途中で上げた分は損金になりません。役員報酬は期首に決めておくものです。
少額減価償却資産の特例は、いくらまで使えますか?
青色申告の中小企業者等なら、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年間合計300万円まで一度に損金にできます。期限は2029年3月31日までです。期末までに使い始めていることが必要です。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。税制は毎年改正されるため、実際の処理は顧問税理士にご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
