法人で資産運用するときの考え方|預金・保険・投資信託の税金と守られる範囲
この記事の要点
- 法人の運用益は、本業の利益と合わせて法人税の対象になります。NISAは個人だけの制度で、法人は使えません。
- 預金保険は法人も対象です。1金融機関ごとに1法人あたり元本1,000万円までと利息等が保護されます。無利息などの決済用預金は全額保護です。
- 運用の前に、まず「残しておくお金」を決めます。月の支出、入金までの期間、借入の返済から、会社ごとに必要な手元資金を計算します。
会社にお金が残るようになると、「預金のままでいいのか」というご相談が増えます。
法人のお金の運用は、個人と税金や制度が違います。この記事では、特定の商品をすすめるのではなく、判断の前に知っておきたい仕組みを整理します。
最初に決める:運転資金を何か月分残すか
運用に回してよいのは「当面使わないお金」だけです。先に、会社に残すお金を決めます。
何か月分が正解という公式の基準はありません。次の3つを資金繰り表で確認して、会社ごとに決めます。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 月の固定的な支出 | 給与、社会保険料、家賃、借入の返済など、売上がなくても出ていくお金 |
| 入金までの期間 | 売上から入金まで何か月かかるか。長いほど多めに残す |
| 決まった大きな支払い | 納税、賞与、設備の更新など、時期と金額が見えているお金 |
この3つを足した額に、売上が落ちたときの余裕を加えたものが「残すお金」です。それを超える部分を、使う時期ごとに分けて考えます。
作り方は資金繰り表の作り方の記事で解説しています。
法人の運用益にかかる税金
法人が預金の利息、投資信託の分配金や売却益、保険の解約益を得ると、本業の利益と合わせて法人税などの対象になります。
| 法人で運用 | 個人で運用 | |
|---|---|---|
| 運用益の扱い | 本業の利益と合算して課税 | 上場株式等は原則20.315%の分離課税 |
| NISA | 使えない | 18歳以上で日本に住む人が使える |
| 損が出たとき | 本業の利益と相殺できる | 給与などとは相殺できない |
法人税率は、資本金1億円以下の法人で年800万円以下の所得の部分が15%、それを超える部分は23.2%です。実際には法人住民税や事業税も加わります。
本業が赤字の年は運用益と損失が相殺される一方、黒字の年は運用益にもそのまま税金がかかります。
個人の20.315%は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税(所得税額の2.1%)の合計です。出典:国税庁 No.5759 法人税の税率、国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税、金融庁 NISAを知る
預金:預金保険で守られる範囲
預金保険は個人だけでなく法人の預金も対象です。会社名義の預金と社長個人の預金は、それぞれ別の1預金者として扱われます。
| 預金の種類 | 保護の範囲 |
|---|---|
| 決済用預金(無利息・いつでも払い戻せる・引き落としなどができる) | 全額 |
| 一般預金等(定期預金、利息のつく普通預金など) | 1金融機関ごとに1預金者あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息等 |
| 外貨預金、譲渡性預金など | 保護の対象外 |
1,000万円を超える部分は、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われるため、全額が戻るとは限りません。
預金が多い会社は、金融機関を分ける、決済用預金を使う、といった置き方を検討します。
出典:預金保険機構 保護の範囲、預金保険機構 よくあるご質問、金融庁・預金保険機構 預金保険制度
会社に残すお金と、運用に回せるお金の線引きを一緒に考えます。
投資信託・株式:期末の評価
法人が持つ有価証券は、決算のときにどう評価するかが「売買目的」かどうかで変わります。
| 売買目的有価証券 | 売買目的外有価証券 | |
|---|---|---|
| どんなもの | 短期の値動きで利益を得る目的で、専門の部署が日常的に売買するもの、取得時に帳簿で区分したものなど | それ以外。中長期で持つ投資信託や株式の多くはこちら |
| 期末の評価 | 時価で評価し、評価益・評価損を利益に反映 | 原則として取得した価額のまま |
| 税金への影響 | 売っていなくても値上がり分が課税対象 | 売ったときに損益が確定 |
売買目的外の上場有価証券でも、価額が著しく下がり回復の見込みがないときは、評価損を計上できる場合があります。国税庁は、おおむね帳簿価額の50%相当額を下回る場合を目安として示しています。
値動きのある商品は元本が減ることもあります。運用するのは、数年使う予定のないお金に限るのが基本です。
出典:国税庁 売買目的で保有する有価証券の評価、国税庁 有価証券等の譲渡損益、時価評価損益等、国税庁 No.5574 有価証券の評価損が認められる場合
保険:解約返戻金と資産計上
法人保険は、払った保険料の一部または全部が「保険積立金」として資産に載ることがあります。割合は、保険の種類と最高解約返戻率で決まります。
| 最高解約返戻率(定期保険など) | 資産に計上する割合 |
|---|---|
| 50%以下 | 資産計上なし(期間の経過に応じて損金) |
| 50%超70%以下 | 保険期間の当初4割の期間は、保険料の40% |
| 70%超85%以下 | 保険期間の当初4割の期間は、保険料の60% |
| 85%超 | 最高解約返戻率の70%(当初10年間は90%)を掛けた額 |
解約すると、戻ってきたお金と資産に載っている額(簿価)の差が、利益または損失になります。利益が出る年に解約すると、その年の法人税が増えます。
保険は、早い時期に解約すると払った額を大きく下回ることが多く、「いつでも使えるお金」ではありません。決算書の読み方は保険積立金の記事、退職金の準備として使う考え方は法人NISAの記事で説明しています。
最高解約返戻率70%以下で年換算保険料相当額30万円以下の保険には、簡便な取扱いがあります。出典:国税庁 法人税基本通達9-3-5の2
社長個人で運用する場合との比較
会社で運用するか、役員報酬などで社長個人に移してから運用するかは、よく比べられるテーマです。
法人で運用
- 会社の資金繰りにすぐ使える
- 運用の損失を本業の利益と相殺できる
- 決算書に載るので、銀行も中身を見る
社長個人で運用
- NISAの非課税枠が使える
- 個人に移すときに所得税・住民税・社会保険料がかかる
- 会社が困ったときに戻すには、貸付などの手続きが必要
どちらがよいかは、会社の利益の水準、社長の年齢や使う時期、借入の状況で変わります。両方を組み合わせるのが現実的です。社長個人の置き場所はNISAと個人向け国債の記事で解説しています。
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よくある質問
会社名義でNISA口座を作れますか?
作れません。NISAは日本に住む18歳以上の個人が使える制度で、法人は対象外です。法人の運用益は本業の利益と合わせて法人税などの対象になります。
会社の預金と社長個人の預金が同じ銀行にあると、保護は合わせて1,000万円ですか?
別々です。会社名義の預金と代表者個人の預金は、それぞれ1預金者として扱われ、一般預金等はそれぞれ元本1,000万円までと利息等が保護されます。
法人で持っている投資信託は、決算のたびに時価で評価するのですか?
売買目的有価証券にあたる場合は時価で評価し、評価損益が利益に反映されます。中長期で持つ売買目的外有価証券は、原則として取得した価額のままです。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、特定の金融商品をすすめるものではありません。税金の扱いは会社の状況で変わるため、実際の判断は顧問税理士にご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
