社長個人の資産づくり:NISAと個人向け国債を使い道の時期で使い分ける
この記事の要点
- 新NISAは年間360万円まで、生涯で1,800万円まで。値動きがあるので、10年以上先に使うお金が向いています。
- 個人向け国債は元本割れがなく、最低0.05%の金利がつきます。発行から1年たてば中途換金できますが、直前2回分の利子相当額が差し引かれます。
- 社長の場合は、まず会社のお金と個人のお金を分けることが出発点です。会社のお金で国のNISAは使えません。
預金にも金利がつく時代になりました。社長ご自身のお金も、ただ置いておくのではなく、置き場所を考える意味が出てきています。
この記事では、国の制度であるNISAと個人向け国債を、「いつ使うお金か」で使い分ける考え方を整理します。特定の商品をおすすめするものではありません。
新NISAのしくみと上限
NISAは、個人が投資信託や株式などで得た利益を、一定の枠の中で非課税にできる国の制度です。2024年から今の形になりました。
| つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
| 生涯の上限 (非課税保有限度額) | 合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) | |
| 非課税で持てる期間 | 無期限 | |
| 対象 | 18歳以上の個人 | |
| 枠の再利用 | 売却すれば、その分の枠を再び使える | |
2つの枠は同じ年に併用できます。両方を使えば、年間で最大360万円です。
大切なのは、NISAは「税制の優遇」であって「元本の保証」ではないことです。中身は値動きのある投資信託や株式なので、使う時期に値下がりしている可能性があります。
令和8年度税制改正で、つみたて投資枠を0〜17歳でも使えるようにする見直しが決まり、2027年からの実施が予定されています。出典:金融庁 NISA早わかりガイドブック、金融庁 令和8年度税制改正について
個人向け国債の3つのタイプ
個人向け国債は、国が発行する個人向けの債券です。満期まで持てば額面どおり戻り、金利には下限があります。
| 変動10年 | 固定5年 | 固定3年 | |
|---|---|---|---|
| 満期 | 10年 | 5年 | 3年 |
| 金利のタイプ | 変動(半年ごとに見直し) | 固定 | 固定 |
| 金利の決め方 | 基準金利 × 0.66 | 基準金利 − 0.05% | 基準金利 − 0.03% |
| 最低金利 | 年0.05% | ||
| 購入単位 | 1万円から1万円単位 | ||
| 利払い・発行 | 利払いは半年ごと年2回、発行は毎月 | ||
変動10年は、市場の金利が上がれば受け取る利子も増えます。固定タイプは、買った時点の金利が満期まで続きます。
中途換金のルール
- 発行から1年たてば(第2期利子支払日以降)、原則いつでも一部または全部を換金できます。
- 換金するときは、直前2回分の各利子(税引前)相当額 × 0.79685 が差し引かれます。
- 1年未満でも、口座名義人が亡くなった場合や、災害救助法が適用された大規模な自然災害で被害を受けた場合は換金できます。
差し引かれるのは「利子の約1年分(税引後)」です。元本が減るわけではありませんが、早く換金するほど手元に残る利子は少なくなります。
実際の利率は毎月の募集ごとに財務省が発表します。この記事では具体的な利率は載せていません。購入を考えるときは、その月の募集分の利率を財務省のページでご確認ください。
出典:財務省 個人向け国債 商品の比較、財務省 中途換金のよくある質問、財務省 現在募集中の個人向け国債
会社と社長個人のお金を、全体でどう配分するか一緒に整理します。
使い道の時期で分ける
どちらが得かではなく、「そのお金をいつ使うか」で置き場所を決めると迷いにくくなります。
| 使う時期 | 例 | 置き場所の考え方 |
|---|---|---|
| すぐ使う (1年以内) | 生活費の予備、納税資金、急な出費 | 普通預金など、いつでも引き出せる場所。国債は1年たつまで原則換金できないため向きません。 |
| 数年後 (1〜5年程度) | 住宅の頭金、子どもの進学費用 | 元本が減りにくいもの。定期預金や、使う時期に合わせた固定3年・固定5年、または変動10年の国債が候補になります。 |
| 10年以上先 | 老後の生活費、ゆとり資金 | 値動きを待てる期間があるので、NISAで少しずつ積み立てる考え方が合います。 |
数年後に使うお金を値動きのある投資に回すと、使う時期に下がっていても待てません。反対に、10年以上使わないお金を預金だけに置くと、物価が上がる局面では実質的に目減りすることがあります。
なお、変動10年は1年たてば換金できるため、「数年後に使うかもしれないが時期が決まっていない」お金の置き場所として検討されることもあります。換金時の差し引きは上で説明したとおりです。
社長ならではの3つの注意点
1. 会社のお金と個人のお金を分ける
中小企業の社長は、会社の預金と個人の預金の境目があいまいになりがちです。まず、個人の資産づくりは個人の口座で行うと決めましょう。
会社から個人へお金を移す基本の流れは、役員報酬です。毎月の報酬から一定額を積み立てる形にすると、無理なく続けられます。報酬の決め方は役員報酬の決め方の記事で解説しています。
2. 会社のお金で国のNISAは使えない
NISAは個人のための制度です。会社名義で口座を開くことはできません。会社に余ったお金があっても、それを直接NISAに入れることはできず、役員報酬などで個人に移してからになります。
なお財務省は、2026年12月募集分(2027年1月発行分)から、個人向け国債の販売対象を非上場法人など一部の法人等にも広げる予定と発表しています。名前も「個人向け国債プラス」に変わります。会社の資金をどう置くかは、資金繰りとあわせて別に考える必要があります。
3. 当社の「法人NISA」は国のNISAとは別物
当社では、会社の利益の一部を積み立てて社長の退職金として受け取る考え方を「法人NISA」と呼んでいます。これは当社の呼び名で、国のNISA制度とは関係ありません。
個人のNISAは「社長個人のお金」、法人NISAは「会社のお金で準備する退職金」です。どちらか一方ではなく、役割を分けて考えます。詳しくは法人NISAの記事をご覧ください。
よくある質問
NISAと個人向け国債は、どちらを優先すべきですか?
どちらが優れているかではなく、使う時期で分けて考えます。10年以上使わないお金はNISA、数年以内に使う予定のお金は国債や預金、という分け方が一つの目安です。
個人向け国債は途中で解約できますか?
発行から1年たてば、原則いつでも中途換金できます。その際、直前2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685をかけた額が差し引かれます。
会社の余剰資金をNISAで運用できますか?
できません。NISAは個人の制度で、会社名義では使えません。当社が使う「法人NISA」という呼び名は、国のNISAとは別の、会社で社長の退職金を準備する考え方です。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、特定の金融商品の購入や投資をおすすめするものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。制度の内容や利率は変わることがあるため、金融庁・財務省の案内でご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
