役員社宅で社長の手取りを増やすしくみ:賃貸料相当額の計算と社会保険料
この記事の要点
- 会社が借りた住宅を社長に貸し、国税庁の式で計算した「賃貸料相当額」以上を受け取れば、給与として課税されません。
- 計算式は、床面積で決まる「小規模住宅」かどうかで変わります。床面積240㎡超などの豪華社宅は、時価の家賃が基準です。
- 社会保険料では、住宅は「現物給与」として報酬に入ります。2026年10月から、計算が総面積1㎡あたりの額に変わりました。
社長が自宅の家賃を払うとき、そのお金は所得税・住民税・社会保険料を引かれたあとの手取りから出ています。
会社が住宅を借りて社長に貸す「役員社宅」にすると、同じ住まいでも手取りが変わります。しくみと計算方法を、国税庁の式で説明します。
役員社宅の流れ
- 1会社が契約会社名義で住宅を借りる
- 2会社が家賃を払う家主へ毎月支払い
- 3社長に貸す社宅として住む
- 4社長が家賃を払う賃貸料相当額以上を会社へ
ポイントは、社長から会社へ払う家賃の額です。国税庁は、役員から1か月あたり「賃貸料相当額」以上を受け取っていれば、給与として課税しないとしています。
| 社長から受け取る家賃 | 給与課税される額 |
|---|---|
| 賃貸料相当額以上 | なし |
| 賃貸料相当額より少ない | 賃貸料相当額との差額 |
| 無償(0円) | 賃貸料相当額の全額 |
賃貸料相当額の計算式
まず、住宅が「小規模住宅」かどうかを床面積で判定します。
| 建物の耐用年数 | 小規模住宅になる床面積 |
|---|---|
| 30年以下(木造など) | 132㎡以下 |
| 30年超(鉄筋コンクリート造など) | 99㎡以下 |
判定のあと、次の式で月額を計算します。
| 区分 | 賃貸料相当額(月額) |
|---|---|
| 小規模住宅 | ①建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2% ②12円 × 総床面積(㎡)÷ 3.3㎡ ③敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22% ①〜③の合計 |
| 小規模でない・自社所有 | (建物の課税標準額 × 12% + 敷地の課税標準額 × 6%)÷ 12 ※耐用年数30年超の建物は12%を10%に |
| 小規模でない・借上げ | 会社が払う家賃の50%と、上の自社所有の式の額の、多いほう |
| 豪華社宅 | 通常支払うべき使用料(時価の家賃) |
豪華社宅かどうかは、床面積240㎡超のものについて、取得価額や家賃の額、内外装の状況などを総合して判断します。240㎡以下でも、プールなどの設備や、役員個人の好みを強く反映した設備がある住宅は豪華社宅にあたります。
固定資産税の課税標準額は、その年の1月1日時点で固定資産課税台帳に登録された価格です。借上げ社宅では、家主に固定資産税の課税明細などを出してもらって確認します。小規模住宅の式は、所得税基本通達36-41で定められています。出典:国税庁 No.2600 役員に社宅などを貸したとき、国税庁 所得税基本通達36-40・36-41、国税庁 質疑応答事例(固定資産税の課税標準額)
計算例:家賃20万円のマンション
次の条件の「例」です。実際の課税標準額は物件ごとに異なります。
- 会社が借りる東京都内の鉄筋コンクリート造マンション、床面積66㎡
- 会社が家主に払う家賃:月200,000円
- 固定資産税の課税標準額:建物6,000,000円、敷地9,000,000円(例)
耐用年数30年超で99㎡以下なので、小規模住宅の式を使います。
| ①建物 | 6,000,000円 × 0.2% = 12,000円 |
|---|---|
| ②床面積 | 12円 × 66㎡ ÷ 3.3㎡ = 240円 |
| ③敷地 | 9,000,000円 × 0.22% = 19,800円 |
| 賃貸料相当額(月) | 12,000円 + 240円 + 19,800円 = 32,040円 |
社長が会社に月32,040円以上を払えば、家賃200,000円との差の167,960円は給与として課税されません。
お住まいの物件で賃貸料相当額がいくらになるか、一緒に計算します。
手取りが増える理由
上の例で、会社の負担を同じにしたまま比べます。社宅にする場合、会社の実質負担は「家賃200,000円 − 社長から受け取る32,040円 = 167,960円」です。その分、役員報酬を下げます。
| A 自分で借りる | B 役員社宅 | |
|---|---|---|
| 役員報酬(月) | 今の報酬 | 今の報酬 − 167,960円 |
| 会社が払う家賃 | 0円 | 200,000円(受取32,040円) |
| 社長が払う家賃 | 200,000円(手取りから) | 32,040円 |
| 社長の手元に残るお金 | 基準 | 167,960円にかかっていた所得税・住民税・社会保険料の分だけ多い |
- 1報酬を167,960円下げる会社の負担は同じ
- 2その分の税と保険料が減る所得税・住民税・社会保険料
- 3家賃は32,040円に報酬から天引き
- 4手取りが増える減った税と保険料の分
つまり、家賃のうち賃貸料相当額を超える部分を、税金と社会保険料を引かれる前のお金で払うのと同じ形になります。どれだけ増えるかは、報酬の水準によって変わります。報酬全体の考え方は役員報酬の決め方の記事で解説しています。
B では、次の章のとおり住宅が社会保険料の報酬に加わるため、社会保険料の減り方は報酬の減額分より小さくなります。
社会保険料の扱い
健康保険・厚生年金保険では、住宅の貸与は「現物給与」として報酬に含めます。価額は厚生労働大臣が都道府県ごとに定め、勤務地の都道府県の額を使います。
2026年10月1日から、住宅の価額は「居住用の室の畳1畳あたり」から「総面積1㎡あたり」に変わりました。総面積には台所やトイレ、浴室も含みます。別棟の物置・車庫や共用部分は除きます。
家賃を本人から受け取っている場合は、現物給与の価額から受け取った額を差し引きます。上の例(東京都、1㎡あたり1,330円)では次のとおりです。
| 住宅の現物給与の価額 | 1,330円 × 66㎡ = 87,780円 |
|---|---|
| 社長から受け取る家賃 | 32,040円 |
| 報酬に加える額(月・例) | 87,780円 − 32,040円 = 55,740円 |
健康保険組合に加入している場合は、組合の規約で別の価額を定めていることがあります。出典:日本年金機構 現物給与の価額、日本年金機構 全国現物給与価額一覧表(PDF)
始める前の注意点
- 契約は会社名義に。社長個人の契約のまま家賃を会社が払う形では、社宅として説明しにくくなります。
- 社宅規程を作る。家賃の計算方法や負担のルールを書面にします。
- 報酬の変更時期に注意。役員報酬は原則として期首から3か月以内にしか変えられません。決算前の対策は決算前にできる節税の記事をご覧ください。
- 年金と退職金への影響。報酬を下げると、将来の厚生年金や、最終報酬月額で計算する役員退職金が少なくなることがあります。
- 毎年見直す。固定資産税の課税標準額は3年ごとに評価が見直されます。
よくある質問
社長が今住んでいる賃貸を社宅に切り替えられますか?
切り替えられる場合があります。会社名義の契約に変えられるかは家主との相談になります。名義変更と同時に社宅規程を整え、賃貸料相当額を計算します。
家賃の半分を払えば給与課税されませんか?
50%の基準が使えるのは、小規模でない借上げ社宅のときの比較の一つです。小規模住宅は国税庁の式で計算した額が基準です。豪華社宅は時価の家賃が基準になります。
社宅にすると社会保険料はどうなりますか?
住宅は現物給与として報酬に入ります。勤務地の都道府県の1㎡あたりの価額に総面積をかけ、本人から受け取った家賃を引いた額が報酬に加わります。健康保険組合では別の定めがあることがあります。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。社宅の導入や賃貸料相当額の計算、税務・社会保険の扱いは、顧問税理士や社会保険労務士にご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
