小規模企業共済の受け取り方:一括・分割・併用の違いと税金の扱い
この記事の要点
- 共済金は「一括」「分割」「一括と分割の併用」で受け取れる。一括は退職所得、分割は公的年金等の雑所得として扱われる
- 分割は60歳以上で共済金300万円以上、併用は330万円以上(一括分30万円以上)が条件。解約手当金は分割にできない
- 役員退職金と同じ年に一括で受け取ると、退職所得控除は2つの勤続期間の重なりを調整して計算される。受け取る年は早めに決めておく
小規模企業共済は、社長や個人事業主のための「退職金の積み立て」です。掛金を払うときの所得控除はよく知られていますが、出口の「受け取り方」で手取りが変わることは見落とされがちです。
この記事では、受け取り方の3つの方法と税金の扱い、注意点を順番に説明します。経営セーフティ共済や法人保険との違いは3つの方法の比較記事をご覧ください。
加入できる人と掛金の範囲
| 加入できる人 | 常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の会社の役員や個人事業主など |
|---|---|
| 掛金月額 | 1,000円〜70,000円の範囲で、500円単位で選べる |
| 掛金の税金の扱い | その年に払った掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象 |
| 払う人 | 社長個人(会社の経費にはならない) |
月7万円なら年84万円が所得から差し引かれます。ここまでは「入口」の話です。実際の手取りは、受け取るときの税金の扱いで決まります。
商業は卸売業・小売業、サービス業は宿泊業・娯楽業を除きます。出典:中小機構 制度の概要、中小機構 役員退任時の共済金、国税庁 No.1135 小規模企業共済等掛金控除
共済金の種類:A・B・準共済金・解約手当金
受け取れる金額は「なぜ受け取るか(共済事由)」で4つに分かれます。会社役員の場合は次のとおりです。
| 種類 | 主な受け取る理由 | 受け取れる納付月数 |
|---|---|---|
| 共済金A | 会社の解散 | 6か月以上 |
| 共済金B | 病気・けが、または65歳以上での役員退任。死亡。65歳以上で180か月以上納付した人の老齢給付 | 6か月以上 |
| 準共済金 | 65歳未満で、病気・けが以外の理由で役員を退任 | 12か月以上 |
| 解約手当金 | 任意解約、掛金を12か月以上滞納したときの機構解約など | 12か月以上 |
同じ掛金でも、A・Bと準共済金では受取額が違います。掛金月額1万円の例です。
| 納付年数 | 掛金合計 | 共済金A | 共済金B | 準共済金 |
|---|---|---|---|---|
| 10年 | 1,200,000円 | 1,290,600円 | 1,260,800円 | 1,200,000円 |
| 20年 | 2,400,000円 | 2,786,400円 | 2,658,800円 | 2,419,500円 |
| 30年 | 3,600,000円 | 4,348,000円 | 4,211,800円 | 3,832,740円 |
60代前半で社長を退く予定なら、65歳まで役員を続けるかどうかで「準共済金」か「共済金B」かが変わります。退任の時期は受取額にも関わります。
金額は基本共済金で、予定利率1.0%で計算されたものです。実際には付加共済金が加算される場合があります。出典:中小機構 小規模企業共済 制度のしおり(令和8年4月改訂版)
受け取り方は3通り:一括・分割・併用
| 受け取り方 | 条件 | 税金の扱い |
|---|---|---|
| 一括 | 条件なし | 退職所得(死亡によるものは相続税の対象となる死亡退職金扱い) |
| 分割 | 共済事由が生じたとき60歳以上、共済金300万円以上 | 公的年金等の雑所得 |
| 併用 | 60歳以上、共済金330万円以上で、分割分300万円以上かつ一括分30万円以上 | 一括分は退職所得、分割分は公的年金等の雑所得 |
分割は、年6回(1月・3月・5月・7月・9月・11月)、10年か15年のどちらかの期間で受け取ります。
解約手当金は分割にできません。解約手当金は原則として一時所得扱いで、法人成りに伴う解約などは退職所得扱いになります。
金額の条件は、共済金から未納掛金や融資関係の控除額などを引いた後の額で判定します。出典:中小機構FAQ 分割の条件、中小機構FAQ 併用の条件、中小機構FAQ 解約手当金の分割
役員退職金と共済金をいつ、どの形で受け取るか。退任までの計画を一緒に整理します。
受け取り方の比較表
| 一括 | 分割 | 併用 | |
|---|---|---|---|
| 所得の区分 | 退職所得 | 公的年金等の雑所得 | 両方 |
| 控除のしくみ | 退職所得控除を引いて、さらに2分の1 | 公的年金等控除を引く | それぞれで計算 |
| 他の収入との関係 | 他の所得と分けて計算 | 国の老齢年金などと同じ区分になる | 分割分のみ影響 |
| 向いている人 | 退職所得控除の枠に余裕がある人 | 役員退職金で退職所得控除を使い切る人 | 一部をまとまった資金にしたい人 |
一括の退職所得は「(収入金額 - 退職所得控除額)× 2分の1」で計算し、他の所得とは分けて課税されます。退職所得控除の範囲に収まれば、所得はゼロになります。
分割は公的年金等の雑所得として、収入金額から公的年金等控除額を差し引いて計算します。国の老齢年金と同じ区分なので、受け取る年金が多いほど、税金の計算に影響しやすくなります。
どちらが有利かは、役員退職金の額、在任年数、年金の額で変わります。まず退職金の手取り計算ツールで、役員退職金だけで退職所得控除をどれくらい使うかを確かめておくと判断しやすくなります。
出典:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき、国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
納付月数が短いと元本割れする
- 共済金A・B:納付月数6か月未満は掛け捨て
- 準共済金:12か月未満は掛け捨て
- 解約手当金:12か月未満は支給なし。240か月(20年)未満で解約すると掛金合計を下回る
解約手当金の支給率は、12か月以上84か月未満で掛金合計の80%です。そこから段階的に上がり、240か月以上246か月未満で100%、最高で120%になります。
「所得控除が大きいから」と高い掛金で始め、資金繰りが苦しくなって途中で解約すると、受取額が掛金を下回ります。続けられる金額にしておくことが大切です。掛金は500円単位で減らすこともできます。
出典:中小機構 制度のしおり
役員退職金と同じ年に受け取るとき
小規模企業共済の共済金や解約手当金の一部は、税法上「退職手当等とみなされるもの」です。会社からの役員退職金と同じ年に一括で受け取ると、2つの退職手当等として計算が調整されます。
- 勤続年数は、それぞれの勤続期間のうち最も長い期間を基準にし、重なっていない期間があれば加えて数える
- 退職所得控除額は、その勤続年数をもとに計算する。2倍になるわけではない
- 前年以前4年内に他の退職手当等を受け取っていた場合も、重複する期間の分が退職所得控除額から差し引かれる
- 2か所目の支払いを受けるときは、「退職所得の受給に関する申告書」に先に受け取った退職手当等の内容を書き、源泉徴収票を添える
つまり、役員退職金と共済金を同じ年に一括で受け取ると、退職所得控除を両方で分け合う形になりやすいということです。
受け取る年をずらす、共済金を分割にする、といった方法で税負担が変わることがあります。共済の期間の数え方や重複の判定は個別の事情で変わるため、具体的な計算は顧問税理士に確認してください。役員退職金の額の目安は役員退職金の相場の記事で解説しています。
令和8年1月1日以後は、確定拠出年金の老齢一時金がからむ場合に「前年以前9年内」「前年以前19年内」の調整も設けられています。出典:国税庁 No.2725 退職所得となるもの、国税庁 No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき
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よくある質問
60歳未満で退任したら分割で受け取れますか?
分割と併用は、共済事由が生じた時点で60歳以上であることが条件です。60歳未満なら一括で受け取ります。
途中で解約した場合も分割にできますか?
できません。解約手当金は分割で受け取れず、一括のみです。税金の扱いも原則として一時所得で、共済金とは異なります。
役員退職金と共済金を同じ年に受け取ると、退職所得控除は2回使えますか?
使えません。同じ年に2つの退職手当等を受け取ると、勤続期間の重なりを調整した1つの勤続年数で退職所得控除額を計算します。受け取る年や受け取り方は、顧問税理士と相談して決めるのがおすすめです。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を行うものではありません。共済金の条件や税制は変わることがあるため、請求の前に中小機構の案内や国税庁の情報、顧問税理士にご確認ください。内容は2026年10月時点のものです。
