役員退職金規程の作り方:入れる項目・役位別の功績倍率・決議までの流れ
この記事の要点
- 規程があると、計算の根拠を税務調査で示しやすくなり、株主総会でも「規程に従う」と決議しやすくなります。ただし、規程があれば必ず経費になるわけではありません。
- 規程には、対象者、支給額の計算式(最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率)、役位別の功績倍率、功労加算、減額・不支給、弔慰金、支給時期などを入れます。
- 記事の功績倍率の表は説明のための例で、法律や国税庁が決めた基準ではありません。倍率の根拠を説明できるようにしておきましょう。
社長の退職金は、払う直前に金額を決めると根拠を説明しにくくなります。先に「役員退職金規程」を作っておくのが基本です。規程に入れる項目と、作る手順を表と図でまとめました。
金額の相場は、役員退職金の相場と適正額の決め方で解説しています。
規程があると何が良いか
経費の説明材料
計算の根拠を、税務調査で示しやすくなります。
支給の根拠
株主総会で「規程に従う」と決議しやすくなります。
事業承継の準備
いつ、いくら必要かが分かり、財源を計画できます。
ただし、規程があれば必ず経費になるわけではありません。法人税法では、不相当に高額な部分は損金になりません。
相当かどうかは、業務に従事した期間、退職の事情、同業で規模が近い会社の支給状況などから判断されます。規程の中身そのものが適正であることが大切です。
規程に入れる主な項目
ひな形をそのまま使うより、項目ごとに自社の考え方を決めるのがおすすめです。主な項目は次のとおりです。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 目的・対象者 | 取締役、監査役など、どの役員が対象か |
| 支給の決定 | 株主総会の決議にもとづき支給すること |
| 支給額の計算式 | 最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率 |
| 在任年数の数え方 | 1年未満の端数の扱い(月割り、切り上げなど) |
| 役位別の功績倍率 | 社長、専務、常務、取締役、監査役ごとの倍率 |
| 功労加算 | 特に功績のあった役員に加算できること、その上限 |
| 減額・不支給 | 解任や会社に損害を与えた場合などの扱い |
| 弔慰金 | 在任中に亡くなった場合の弔慰金の額 |
| 支給時期と方法 | 決議後いつまでに払うか、一括か分割か |
| 改廃 | 規程を変えるときの手続き |
計算式の考え方は、次の図のとおりです。
- 1最終報酬月額退任時の月額報酬
- 2在任年数役員だった年数
- 3功績倍率役位ごとに設定
- 4支給額+功労加算など
弔慰金の決め方
相続税では、会社から受け取る弔慰金のうち、次の額までは弔慰金として扱われます。超える部分は退職手当金等として相続税の対象です。
| 亡くなった理由 | 弔慰金として扱われる額 |
|---|---|
| 業務上の死亡 | 死亡当時の普通給与の3年分 |
| 業務外の死亡 | 死亡当時の普通給与の半年分 |
規程で弔慰金を決めるときは、この扱いを参考にする会社が多いです。
役位別の功績倍率の決め方
功績倍率は、役位が上がるほど高くするのが一般的です。下の表は考え方を示す例です。法律や国税庁が決めた基準ではありません。
| 役位 | 功績倍率(例) |
|---|---|
| 代表取締役社長 | 3.0倍 |
| 専務取締役 | 2.5倍 |
| 常務取締役 | 2.2倍 |
| 取締役 | 1.8倍 |
| 監査役 | 1.5倍 |
国税不服審判所の判断では、倍率は事案ごとに違い、1倍前後が採用された例もあります。表の数字なら安全、というものではありません。
役位が途中で変わった場合に、どの倍率を使うかも決めておきます。例えば「最終の役位の倍率」とするか、「役位ごとの在任年数で按分」するかです。
功労加算の上限も決めておく
「功績倍率で計算した額の○%以内」のように上限を書きます。上限がないと、金額が膨らみやすくなります。
御社の役員報酬と在任年数から、規程にもとづく退職金の目安を試算します。
作成から支給までの流れ
規程案を作る
項目ごとに内容を決め、顧問税理士と確認します。
取締役会で決議
規程を制定し、議事録を残します。
株主総会で決議
退任時に、金額または規程による一任を決議します。
支給
規程の時期と方法で払い、記録を残します。
役員の退職慰労金は、会社法上の「報酬等」にあたると解されています。定款に定めがなければ、株主総会の決議が必要です。
経費になる時期は、原則として株主総会の決議などで金額が確定した事業年度です。実際に支払った年度に損金経理をすれば、その年度も認められます。
作るときの注意点
しておきたいこと
- 倍率の根拠を説明できるようにする
- 議事録と規程をセットで保管する
- 退職金の財源を早めに準備する
- 数年ごとに規程を見直す
避けたいこと
- 根拠のない高い功績倍率
- 退職直前に規程を作り、倍率を上げる
- 分掌変更後も経営の中心に残る
- 未払金に計上したままにする
分掌変更で払う場合
社長を退いて会長などに残る場合も、実質的に退職したのと同じ状況なら退職金として扱える場合があります。国税庁は例として、常勤から非常勤への変更、取締役から監査役への変更、報酬がおおむね50%以上減った場合を挙げています。
ただし、肩書きより実態が問われます。経営上主要な地位に残っていれば、退職とは認められにくくなります。また、未払金に計上しただけの金額は、原則として退職給与に含まれません。
作成前のチェックリスト
- 対象となる役員を決めた
- 役位別の功績倍率と根拠を決めた
- 功労加算の上限を決めた
- 減額・不支給の条件を決めた
- 弔慰金の額を決めた
- 支給時期と方法を決めた
- 財源の準備方法を考えた
- 顧問税理士に確認した
財源づくりは法人NISAの記事、手取り額は退職金の手取りシミュレーターで確認できます。
よくある質問
退職の直前に規程を作っても大丈夫ですか?
退職直前に規程を作り、倍率を上げることは避けたいことの一つです。払う直前に金額を決めると根拠を説明しにくくなるため、先に規程を作っておくのが基本です。
役員退職金は、どの年度の経費になりますか?
原則として、株主総会の決議などで金額が確定した事業年度です。実際に支払った年度に損金経理をすれば、その年度も認められます。
社長を退いて会長に残る場合でも、退職金を払えますか?
実質的に退職したのと同じ状況なら、退職金として扱える場合があります。ただし肩書きより実態が問われ、経営上主要な地位に残っていれば退職とは認められにくくなります。
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この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の税務・法務の判断を行うものではありません。記事中の功績倍率は説明のための例で、基準ではありません。規程の内容は、顧問税理士などの専門家とご確認ください。内容は2026年9月時点のものです。
